新政権下初の2010年度予算(一般会計)が閣議決定された。新規国債発行額は、鳩山由紀夫首相が上限としてこだわった44兆円前後にとどまった。だが、この数字にはなんの意味もない。辻褄合わせにすぎない。
新政権は、新規国債発行額を抑制するために、埋蔵金を活用した。その中身は外国為替資金特別会計の剰余金、それに財政投融資特別会計の積立金と剰余金だ。
外国為替資金特別会計の剰余金は一般会計に繰り入れられなければ、財投債(財政投融資の原資調達のために発行される国債)購入か国債整理基金(国債償還のための財源)に回る。財政投融資特別会計の積立金と剰余金は、同様に「短期国債の購入に回る」(浅羽隆史・白鴎大学教授)のが通例だ。
つまり、新規国債発行額を抑制しても、そのぶん国債償還のための借り換え債や財投債発行が増えることになる。国債発行の総額は減らないわけだ。
加えて、今回、国債の利払い費予算額の前提となる金利見通しを、これまでの2.5%から2.0%に引き下げた。これで1兆円ほど捻出されたわけだが、現実の歳出が減ったわけではない。
こうしたまやかしを市場は見抜いている。「財政赤字拡大に歯止めはかからない」(中空麻奈・BNPパリバ証券クレジット調査部長)と見て、日本国債のクレジットスプレッドは衆議院選挙前の2倍弱の水準で高止まりしたまま。10年国債利回りは1.3%前後とほぼ同水準だが、「財政悪化による金利上昇分が期待成長率低下で抑制されているだけ」(佐野一彦・シティグループ証券チーフストラテジスト)であり、財政リスクは確実に増大している。藤井裕久財務相の辞任など新たな火種もくすぶる。
財政再建への有効な道筋を示せなければ遠からず、市場は新政権を見限ることになる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)