「忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。

マネジメント・管理職1年目に読んでおきたい「ドラッカー本」3冊Photo: Adobe Stock

4月は新社会人にだけ特別な時期ではない

 新年度に入ったこともあり、社会人1年目のビジネスパーソンに向けた良書紹介記事を、たくさん目にするようになりました。

 一方で、4月は新卒を「受け入れる側」にとっても特別なタイミングです。実際、この時期に異動や昇格をはたし、新たに管理職になった人、マネジメント業務に従事することになった人もたくさんいるのではないでしょうか。

 そこで今回は、管理職やマネジメント業務1年目を迎えた人に向けて、必読書を3冊紹介してみたいと思います。いずれも「経営学・マネジメントの父」と評されるドラッカーの著作です。『見るだけ読書』では、ドラッカー本のなかでも最もベーシックな『経営者の条件』を紹介しましたが、さらにあと3冊、重要な本をピックアップしてみました。

1.「管理・マネジメント」の「目的」を学ぶ

 最初に紹介するのは、『現代の経営』という本です。この本の中で、ドラッカーは「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに置き換えることにある」といった言葉を残しています。

 今回この引用文で注目したいのは、目標管理というマネジメントの「手法」ではなく、その「目的」のほうです。「部下を支配しないために」という目的を達成するために、目標管理をはじめとした様々なマネジメント手法を活用していく。

 管理職として日々仕事をしていると、「どうすれば、部下を自分の思い通りに動かせるか?」という「支配」前提の問いばかりに陥ってしまいがちです。そんな心理状態のときにこそ、ぜひこの本を読んでみてください。覚醒できるような読書体験になるはずです。

2.なぜ「部下を思い通りに」ではダメなのかを学ぶ

 2冊目は、『産業人の未来』という初期の本を選びました。80年以上前に書かれた本ですが、この本を読むと、ドラッカーが「なぜ、マネジメントの研究を始めたのか?」。あるいは、「なぜ、支配によるマネジメントがNGなのか?」についてのルーツを学び取ることができます。

 ヒトコトでまとめてしまえば、その答えは「私たちひとりひとりが、自由を実感して生きていくために」です。現代社会においては、大半の人が何らかの産業・会社・組織に従事して人生を歩んでいきます。こうした人々=「産業人」がどうすれば自由を実感しながら日々を過ごしていけるかという問題意識から、ドラッカーは会社組織やマネジメントに研究対象を移していきました。

『産業人の未来』が書かれて80年以上経った「未来」を、今まさに私たちは「現在」として生きています。「どうすれば、自分自身や部下がより自由を実感して働けるか?」という問いを立てて日々マネジメント業務に従事していれば、どんな課題や悩みにもドラッカーが応えてくれるはずです。ドラッカーの根本的な問題意識とつながり、ドラッカーとシンクロするための1冊として、ぜひ読んでみてください。

3.現代への「時代認識」を深める

 最後の3冊目は、『ネクスト・ソサエティ』です。この本も2002年刊行のため、すでに私たちは「ネクスト」ソサエティを「今の」社会として生きています。20年前にこの本を読んだ当時、私は「これからかつてなく自由だけど厳しい時代が来るんだな」というメッセージを受け取りました。

「ネクスト・ソサエティは3つの特徴がある」とドラッカーは言っていて、それぞれ「いかなる境界もない」「上方への移動が自由な」「成功と失敗の併存する」社会となります。

 確かに、デジタル技術が高度に進展した現代において、私たちは「境界なく」いくらでも学び、成長することが可能です。その結果、自由にキャリアを選択し、挑戦することができるようになりました。これが2つめの「上方への移動が自由」に対応します。

 一方で、誰もが参入できるため競争は激しくなり、自由に挑戦はできても、成功することや成功し続けることは大変になってくる。また、失敗した時の個々人の捉え方や、組織・社会としての受け皿、心のケアも重要になってきます。まさに、「成功と失敗が併存する」社会を私たちは生きているわけです。

 いずれにせよ、最初期から最晩年に至るまで、ドラッカーのキーワードは一貫して「一人でも多くの人が、どうすれば自由を実感して生きていけるか?」にあります。ここを見失わなければ、他のドラッカーの著作も十分に読み解いていけるはずです。

 以上、「自由」を軸にしてドラッカー本を3冊ガイドしてみました。マネジメントとして、管理職として、日々の課題や悩みにどう対処していくか。今回のブックガイドが、今後に向けた良い契機となっていくことを願っています。

(本原稿は書籍『ひと目でわかる! 見るだけ読書』著者の書き下ろしです)