「忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。
今回は、担当編集によるレビューをお届けします。(書き手/編集部・武井康一郎)

一度きりの人生で後悔しないために知ってほしいことPhoto: Adobe Stock

本を読んで覚醒したことはありますか?

 初めて会う人によく聞く質問がある。

「最近読んでよかった本はありますか?」

 少し考えて出てくる人もいれば、何があったかな? と考え込む人もいる。「一番好きな本は何ですか?」だとすぐ出てくるのに、最近読んでよかった本といわれると、意外に答えに窮するのではないだろうか。

「21世紀出生児縦断調査」(2022年、文部科学省)によると、21歳の約6割が「この1ヵ月に読んだ紙の書籍(本)の数」との質問に「0冊」と答えた。

 小学生の頃に読書習慣があった子でさえ、だんだん読まなくなってくるという。

 世の中に本はたくさんあるのに読みたい本がない。これが結論だとしても、それで片付けていいのだろうか? 皆、本を読んだらいいことをわかっているのに、読まない原因は何なのだろう。

 そんなことを考えていたとき、本書の著者・浅田すぐる氏に出会う。

「ドラッカーが好き」と言う。ドラッカーは「経営の神様」と言われ、知らない人もいないはずだったが、最近はそうでもない。これを「ジェネレーションギャップ」という言葉で片づけるつもりはないが……、名著を読み継ぐ架け橋になる、これもまた大事なミッションだ。

「おわりに」にもあるが、私は企画の立ち上げに時間をかけることをいとわない。設計図づくりを間違うと、ガタガタの家になってしまい、あとで修復不可能になることがあるからだ。時間を重ねて考えられたのがこれだ。

「浅田さんの紙1枚スキルをフル活用して、名著からそのエッセンスだけを抜き出してください。加えて、読者も紙1枚を見たり・埋めたりするだけで即スキル化して使えるところまでいけてしまう。そんな一生役に立つ魔法のような本を書いてください!」(P.4,5)

 本のはじめにの抜粋だが、著者の紙1枚スキル=思考整理術は本を読むうえでも大変重要な役割を担っている。

 1枚にまとめるつもりで読む(P.7)――この発想は正直なかった。

 自分にとって必要なところにふせんを貼り、あとで書いて自分のものにするということはあっても、まとめる感覚で読むことはない。せいぜい、自分の脳を通して、アウトプットするくらい。

 ただ本書は、「1枚にまとめるつもりで読む」技術を身につけて終わりではない。そのあとの「覚醒」が待っている。本を読んで活用している人だけが見える境地。この1冊を読むだけで同じ体験ができるのもまた、本書の不思議な魅力だ。

 野球の動作で例えるなら、球を投げる作業で、ボールをつかみ、下半身をふんばって、腕を振り、球を放る。この過程で、骨が筋肉がそれぞれの役割を果たして1つの作業を完成させる。

 まさに、24冊+αで得た知識が1つのことを成し遂げるうえで全部つながっている感覚を味わえるのだ。知識と知識がつながって自分の血肉になっていく感覚は、読書を楽しむうえで最も大事なことなのかもしれない。それを知れば、本を読まない生活に終止符が打たれるのではないだろうか。

 そして、多くのブックガイドと異なるポイントもここ。本のエッセンスをまとめただけでなく、それらが頭の中でつながっていく面白さは、本書の読みどころであり、短期間で成長するきっかけをつかめるはず。本は著者の人生の追体験ができるのも魅力の一つだが、これはぜひ味わってほしい読書体験である。

 今回取り上げる本を1枚でどうまとめているのか? それもたった16マスで、その本の概要・大事なポイントをつかみ取れる。それらを見るだけで、「本で学ぶべきこと」「得られること」を日々の社会人生活にどう活用していくかが、手に取るようにわかる。

 本書を通して、本を読まなかったら得られなかったであろう、読む楽しさを知るいいきっかけになれば幸いである。こればかりは、自分で獲得しなければいけない。

さて、今回の本で大事なのは、
・何の本を読むか?
・どう読むか?
・どう活かすか?
である。

 次回は「何の本を読むか?」について、レビューしたいと思う。

(書き手/編集部・武井康一郎)