コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。『新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編として、なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)
――新NISAを始める場合、以前から特定口座でやっている投信の積立投資を全額解約して、新NISAの口座に移したほうがいいでしょうか?
中野晴啓 これはその人の財布の中身というか、どれだけ稼ぎ続けられるかにもよるでしょう。たとえば、年齢的にまだ40~50代の方で、この先も積立投資を続ける余力のある人は、今、ある積立部分はそのままにして、新NISAで新たに積み立てをスタートすればいいと思います。
でも、たとえばこれまで積立投資をしてきて、その資金が1000万円ある人が、この先、1800万円を積み立てられるだけの時間も、経済的ゆとりもないという人は、今、課税口座で運用している分を解約して、新NISAに移すことを考えたほうがいいでしょう。
旧NISAには非課税期限がありましたが、新NISAのそれは無期限です。このちがいだけでも新制度には大きなアドバンテージを見出すことができます。したがって、今後1800万円の非課税保有限度額まで投資する余力はないと考える方は、旧制度による残高を売却して、新NISAに乗り換えましょう。
新NISAは非課税期間が無期限、
制度も恒久化されている
新NISAの枠は、最大で1800万円まで投資できます(成長投資枠は1200万円まで)。まずは課税口座で運用している1000万円を年間360万円、月額30万円ずつ新NISAに移行させていくと、約3年、正確には2年と9カ月で大半の資金を新NISAに移行できます。
あとは、移行し終えてまだ資金を積み上げるだけの余裕がある人の場合は、毎月5万円でもいいのでコツコツと積立投資を続けましょう。
新NISAは非課税期間が無期限で、制度そのものも恒久化されているので、新NISAの口座で運用している資金を必要とするそのときまで、運用益を非課税にして運用し続けることができます。
理想としては、今の課税口座で運用している分はそのままにして、さらに新NISAで積み立てていくことです。
たとえば、昨年旧つみたてNISAで満額投資した40万円は、あと19年間の運用益が非課税になります。それに加えて、新制度では新たに1800万円の非課税保有限度額が追加されたわですから、この先に1800万円の満額投資を新たな資金で行うつもりであるならば、従前の旧NISA運用資金は、そのまま継続投資しておくのが合理的でしょう。
新NISAへの移行が
保有資産を見直すきっかけになる
もうひとつ、これは課税口座で運用している分を解約もしくは売却して、新たに新NISAに移行させる人のメリットですが、保有している資産を見直すきっかけになるはずです。
たとえば、課税口座で保有している投資信託、あるいは株式が本当に長期投資に耐えうるものなのかどうかを真剣に検証してみるのです。
もちろん、そのまま引き続き保有する価値があるものであるならば、全く同じものを新NISAで買い付ければいいでしょう。
でも、長期投資するにはやや疑問だと思ったのであれば、解約もしくは売却するのと同時に、自分が「これなら長期で保有できる」と思える投資信託などに乗り換えればいいのです。
【答え】
理想としては、今の課税口座で運用している分はそのままにして、さらに新NISAで積み立てていくこと。
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/