「銀行に預けっぱなし」ではお金が増えない時代になって久しい。この1〜2年でインフレも急激に進行したため、いまの自分の生活を守り、将来の不安を解消するための手段として「投資・資産形成」の重要性がますます高まっている。そんな中、今年1月から新しいNISA制度がスタートし、さっそく口座開設ペースが増加するなどブームを巻き起こしている。
そこで今回は、「お金に困らない人生」を手に入れるための正しい投資法をアドバイスする『新NISAはこの9本から選びなさい』の著者・中野晴啓氏に、新NISAのポイントやメリットについて伺った。
(聞き手は、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏)
販売手数料をわざわざ払う必要はない
安達裕哉(以下、安達) さまざまな金融機関で似たようなラインナップの投資信託が販売されていますが、どこで買っても手数料は一緒なんでしょうか?
中野晴啓(以下、中野) 必ずしもそうではないので、非常にわかりにくいですよね。たとえば、同じ投資信託でも、銀行で買うと販売手数料がつくのに、ネット証券で買えばノーロード(販売手数料ゼロ)というのはよくあるケースです。
販売手数料がかかる商品を買う必要はないと思いますし、誰かが販売手数料を考慮せずに買おうとしていたら「それだけはやめましょう」と言いたくなりますね。きちんと情報収集をして、できるだけノーロード(販売手数料ゼロ)のものを選ぶべきだと思います。
商品ラインナップについても、金融機関ごとに差があります。銀行の場合、かつては非常に多くの銘柄を扱っていましたが、金融庁の指導もあって、いまでは数を絞っています。証券会社では株を買えますが、ファンドのラインナップは銀行と大差ありません。
一方で、ネット証券にはたいがいの投資信託が揃っていて、海外も含めた個別株も買えるので、ラインナップは充実しているといえます。
そのため、手数料の安さも含め、NISA用の口座を開くなら「ネット証券」が最も合理的な選択肢だと思いますし、実際、新NISAの口座開設はネット証券に集中しているのではないでしょうか。
「インデックス」が人気なワケ
安達 最近、「インデックスファンド」が人気を博しているという話を耳にしました。
中野 それは事実だと思います。本来、資産運用の王道は「選別投資」です。なぜなら、多くの会社の株式をバランスよく買うよりも、いい会社だけを選別して買った方がリターンは高くなるはずだからです。
しかし、長期的なリターンでは、銘柄を厳選する「アクティブファンド」の大半はインデックスファンドに負ける、というのがいまや通説になっています。
安達 なぜそういった現象が起きているんでしょうか?
中野 これは、一時的に好況となっているセクターに一気に投資する「短期・集中型」のアクティブファンドが多いためです。
残念ながら、この手のファンドに持続性はありませんし、投資家側も「値上がりしたら売る」と割り切って参加します。つまり、そもそも長期投資の目線が欠けているので、長く運用するうちに成績が悪化していくのは当然なんです。
安達 なるほど。そういう背景もあって、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)などのインデックスファンドが投資家の支持を集めているんですね。
中野 もちろん、100%すべてのアクティブファンドがダメだというわけではありません。長期投資にまじめに取り組もうと、プロフェッショナルを尽くして企業を選別しているファンドも存在します。
そういう例がまだ少数なのが問題ではありますが、今後は日本でも、長期投資へと舵を切るアクティブファンドが増えていくと思いますよ。
「アクティブファンド」で経済の好循環を実現したい
安達 中野さんも、「アクティブファンドを立ち上げたい」とおっしゃっていましたが、具体的な展望を教えてください。
中野 私は「日本株をしっかり育てる」という信念を大事にしています。
日本にも、経営能力・情熱・テクノロジーを兼ね備えた「将来が明るい会社」はありますが、社会全体としては、決してそうではない会社の方が多い。だからこそ、アクティブファンドとして、投資対象を厳選する意義は大きいと思っています。
プロとして、「優良な会社」をきちんと目利きして、国民のお金をそこに集めていけば、素晴らしいリターン率が実現できるはずなんです。
安達 それがうまくいけば、誰にとってもハッピーな循環が生まれますね。
中野 まさにその通りです。有望な日本企業をサポートするファンドをつくって、そのファンドを国民が応援する。そして、その企業が成長して日本経済をけん引し、成長の果実であるリターンが国民に返ってくる、という「美しい構図」をつくりたいですね。
(本稿は、『新NISAはこの9本から選びなさい』の著者・中野晴啓氏へのインタビューをもとに構成しました)