コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編とし&て、なかのアセットマネジメント 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)

【投資のギモンQ&A】新NISAは、毎月最低いくら積み立てればいいでしょうか。5000円くらいでしょうか?Photo: Adobe Stock

――新NISAは、毎月最低いくら積み立てればいいでしょうか。5000円くらいでしょうか?

【投資のギモンQ&A】新NISAは、毎月最低いくら積み立てればいいでしょうか。5000円くらいでしょうか?中野晴啓氏:なかのアセットマネジメント 代表取締役社長

中野 積立額は人それぞれです。一律の答えはありません。ただ、大事なのは毎月、積立投資を継続できる、持続可能な金額を設定することです。

 しかし、だからといって毎月数千円では老後に向けて積み立てを続けても、十分な資産づくりには至りません。

 たとえば毎月5000円で積立投資を続けた場合、将来いくらになるのかをシミュレーションしてみましょう。

 毎月5000円を30年間積み立てるのと同時に、年平均リターンを5%で計算した場合、30年後に出来る資産の額は416万1293円です。

 まあ、ゼロよりはましですが、たったの416万円で残りの人生、何が出来るのでしょうか。正直、416万円のお金など、あっという間に無くなってしまいます。毎月5000円でもこれですから、毎月3000円投資生活がいかに真偽の疑わしいものであるか、おわかりいただけると思います。

ある程度の負荷はかかるが、
何とか続けられる金額がおすすめ

 では、どうすればいいのか。これは、持続可能な積立金額と申し上げましたが、まず5000円から始めたとしても、なれるしたがって本気度を上げて、「ある程度の負荷はかかるけれども、何とか続けられる金額」という水準を見据え、その額まで増額して継続していく努力が欠かせません。

 たとえば毎月5万円を積み立て、前出のシミュレーションと同じ条件で運用したら、30年後にはどうなるでしょうか。そう、毎月5000円の時の10倍で、4161万2932円になります。リタイア時にこれだけの資産があったら、公的年金が多少、減額されたとしても、それなりの老後生活を送ることができるでしょう。

 他方で、老後までの時間が迫る50代以降のシニア世代は、毎月の積立金額に結構な気合を入れる必要があるでしょう。

 もし今55歳で、65歳の定年まで10年しかないという人ならば、現役時代の間の10年間はお給料からの拠出に加え、預貯金からのシフトも併せて、積立投資へと行動するイメージです。

 たとえば、NISAなら1800万円の非課税枠ですから、これを10年で埋められるような金額設定を考える必要があります。1800万円を10年、120カ月で割ると、毎月の積立金額は15万円になります。15万円を年平均5%のリターンで積立運用したとすると、10年後には運用益も合わせて2329万2342円の資産を築くことができます。

年平均5%のリターンで毎月2万円を積み立てた場合、
40年後には3052万403円の資産ができる

資産運用は長期で考えることが大事」と言われるのは、時間を味方につけられるからです。前述したように、定年前の10年間である程度の金額の投資を完了させて、それ以降も長期投資を継続していくことが肝心です。老後は運用を続けながら、計画的に取り崩していく。新NISAの非課税期間無期限化を踏まえ、生涯長期投資家の気概で、時間の価値を活用していきましょう。

 また若い世代の方が、30年とか40年をかけて資産を築こうとするならば、毎月の負荷はそれほど重くなりません。仮に40年という積立期間を設定すると、年平均5%のリターンで月々の積立金額が2万円だとしても、40年後には3052万403円の資産を築くことができます。

 または、20代は毎月2万円、30代は毎月3万円、40代は毎月4万円、50代は毎月5万円というように、10年ごとに積立金額を見直して増額していくように、計画的に新NISAの非課税保有限度額1800万円をフル活用していきましょう。

 この方法なら、年齢に応じて収入が増えていけば、毎月の積立金額が増額されたとしても、おそらくあまり負荷がかからない状態で資産形成ができるでしょう。

【答え】
 ある程度の負荷はかかるが、毎月、積立投資を継続できる金額を設定する。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/