高級会員制クラブに入るのはなぜ?
――小林さん、節税や健康面のほかに、富裕層がお金をかけるのはどの分野でしょうか?
小林 「人脈づくり」にお金をかける傾向はあると思います。これは、国税専門官を退職してライターになってから、経営者や富裕層に直接インタビューする中で気づいたポイントです。
特に、彼らがよく口にするのが、「人とのつながりからビジネスが生まれる」というセリフです。中には、飲み会に行ったらできるだけ全員と言葉を交わすようにしていて、累計で「数千人分の連絡先を知っている」という人もいました。
――数千人はすごいですね。どうして、そこまでするのでしょうか?
小林 私もそれを聞いたのですが、「自分ではわからないことがあったときに、一番詳しそうな人から正確な情報をすぐ聞けるから」と話していました。
都内にいくつかある高級会員制クラブも、会員仲間とビジネスを始めたり、海外でビジネスを展開したいときに現地のクラブを通じて情報収集をしたりできるので、「人脈づくり」に役立っているといいます。
入会金が300万円以上かかるところもありますが、会員になることで得られるメリットを考えると、富裕層にとってはその金額も決して惜しくはないのでしょう。
――一般人は「お金を使う=モノを買う」と考えがちですが、富裕層は人脈という「目に見えない価値」にもお金をかけているんですね。
安達 私が出会った経営者たちも、銀行との「信頼関係」という目に見えない価値を大事にしていました。
銀行との信頼関係がないと、業績が悪化したときにいきなり「お金を貸してください」とお願いしても、なかなか融資してもらえません。なので、あえて業績がいいうちからお金を借りておくことで、ピンチのときに助けてもらえる関係性を作っておくそうです。
また、借りたお金を全額返済すると関係が途絶えてしまうので、返済がある程度進んだら再び借りて、つながりを維持しておくとも言っていました。これも、「ネットワークを大事にする」という話に通じると思います。
なぜ富裕層は「教育」にお金をかけるのか
――ちなみに、富裕層は「教育」にお金をかけるイメージがありますが、実態はどうでしたか?
小林 これについては、世間のイメージ通りで、富裕層は教育資金に糸目をつけない傾向があります。事実、収入が高いほど、子どもや孫の教育に多くのお金が使われるというデータは、総務省の家計調査の統計でも見てとれます。
相続税を支払うような人たちは、「億レベル」の資産を持っているケースが多いですが、ほとんどの場合、そういった資産はビジネスの成功や会社での出世など、自らの努力で勝ち取ったものです。つまり、「自分の成功体験は、きちんとした教育を受けたおかげだ」という認識があるのではないかと思います。
また、「節税面で有利」という要素もあるはずです。子どもや孫に数百万円を渡そうとすると、贈与税が高くつきますが、大学の入学金などの「教育費」であれば非課税になるからです。「教育費」としてお金を有効活用できれば、一家の資産を長期的に増やしていくことにもつながるので、富裕層が教育に力を入れるのは非常に合理的だと思います。
将来に対する不安が高まっている時代を生きる私たちにとって、経営者・富裕層のお金の使い方は、学ぶべきポイントが多々あります。ぜひ、資産を増やしていくうえで参考にしてほしいですね。
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(著者・小林義崇)の内容をベースにした対談記事です