USスチール買収阻止、10%関税、在日米軍撤退…岸田政権に「もしトラ」リスクの備えはあるかPhoto:Joe Raedle/gettyimages

保護主義復活阻止や安全保障確保
麻生元首相訪米だけで大丈夫か

 11月の米大統領選挙で、在任中は「米国第一」主義を掲げ同盟国や友好国にもさまざまな要求を突き付けたトランプ前大統領がバイデン大統領に勝利する可能性もいわれる中で、少なからずの国がそのことを想定してトランプ氏との関係づくりに動いている。

 4月23日には、訪米した麻生太郎元首相(自民党副総裁)がトランプ氏と会談、安全保障問題や中国、北朝鮮を巡る課題などで意見を交換したという。

 今回の麻生氏の訪米は個人的関係の構築を図る狙いとされ、政府もバイデン政権との「二股外交」批判を気にしてか、「(麻生氏の)一議員としての活動」としている。

 だが、トランプ氏は、米国内で政治問題化することになった日本製鉄のUSスチール買収問題では「断固阻止」を明言、また今回の大統領選の公約でも、日本製品を含めた輸入品には一律10%の関税をかけることを提唱するなど、第2期政権となれば、保護貿易主義の復活や在日米軍の駐留経費の負担増額要求など、日本の政治が決断を迫られそうな状況が十分に起こり得る。

 今の議論や報道はトランプ氏の過去の言動の是非やスキャンダル、大統領としての資質など個人的問題に焦点が当たっているが、「トランプ政権2.0」に備えた経済や安全保障の論議を深める必要がある。