ローランドDGの小川和宏常務執行役員

プリンター大手のローランド・ディー・ジー(DG)は4月26日、米投資ファンドと進めるMBO(経営陣が参加する買収)で買い付け価格を1株5370円に引き上げると発表した。同社へのTOB(株式公開買い付け)を予告したブラザー工業の5200円を上回る。価格の“つり上げ合戦”の様相も呈する中、ローランドDGの経営陣は、ブラザー工業の買収提案には「ディスシナジー(負の相乗効果)」の懸念があると繰り返してきた。ローランドDGの小川和宏常務執行役員を直撃し、具体的な懸念の中身について聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

米投資ファンドの買収案に再度「応募推奨」
ブラザーの買収案にはディスシナジーの懸念

――ローランド・ディー・ジー(DG)は4月26日、米投資ファンド、タイヨウ・パシフィック・パートナーズと進めるMBO(経営陣が参加する買収)で買い付け価格を1株5370円に引き上げると発表しました。

 当初、2月にタイヨウとのMBOを発表しました。取締役会として賛同意見を表明し、株主には応募推奨しました。そして、3月中旬にブラザー工業からTOB(株式公開買い付け)の予告がありました。その際、取締役会では、賛同を維持しました。タイヨウの計画は具体的な施策に落とし込まれていて、企業価値を上げる可能性は高いと判断したためです。

 一方、TOB価格はブラザーが5200円で、タイヨウの5035円を上回っていたので、株主への推奨を中立に変更しました。そして、4月26日にタイヨウ側からブラザー側の価格を上回る5370円という価格が提示されたので、再び応募推奨にしました。

――ローランドDGの経営陣は、ブラザーの買収提案に対して「ディスシナジー(負の相乗効果)」の懸念を繰り返し言及してきました。

 まずブラザーの買収提案に対して門戸を閉じてきたわけではありません。昨年9月にブラザーから買収の意向表明がありましたが、その後も企業価値の向上策について意見交換を進めてきました。ただ、ブラザーに買収された場合、ディスシナジーのリスクがあるということは言わなければなりません。

 大型プリンターを作る上で、最も大事な部品がヘッドです。ローランドDGでは、ある大手サプライヤーから8割を購入しています。残りはブラザーなどからの調達になります。大手サプライヤーからは戦略的なパートナーとして、さまざまな恩恵を受けています。

 一つは価格です。やはり、それなりの量を購入していますので。ほかにも一緒に新しい技術を使ったヘッドの開発などもあります。特に大きいのが、新しいヘッドの先行販売です。最先端のヘッドの供給が受けられることで、われわれも競争力のある製品がつくれるのです。

次ページでは、小川氏が、ローランドDGに具体的に生じるディスシナジーの中身に加え、ブラザー側のディスシナジーの認識について明らかにする。また、ブラザーの買収提案を巡る社員の賛否についても明かす。