資産管理を専門とする日本カストディ銀行の田中嘉一前社長が、同行と土屋正裕現社長に1000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求め、東京地方裁判所に提訴したことが分かった。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
「不正行為は一切行っていない」
23年のCBJリリースを全面否定
日本カストディ銀行(CBJ)は、三井住友トラスト・ホールディングス(TH)とりそな銀行が出資する日本トラスティ・サービス信託銀行、そしてみずほフィナンシャルグループ(FG)と生命保険5社が出資する資産管理サービス信託銀行が合併して2020年に発足した国内最大の資産管理銀行だ。
三井住友信託銀行で取締役専務執行役員を務めた田中嘉一氏は、住信SBIネット銀行社長、日本トラスティ・サービス信託銀行社長を経て21年1月にCBJ社長に就任。キャリアで培った知見を生かし、旧2行のシステム統合を指揮していた。
だが、22年末に任期満了で社長を退任し、後任に土屋正裕氏が就いた後の23年6月、CBJが突然「元取締役による不正行為について」と題するリリースを公表した。その中でCBJは「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」としている。この「元取締役」こそ田中氏である。
今回、田中氏が“古巣”を相手に提訴に踏み切ったのは、このリリースが原因だ。
24年3月28日付の訴状によれば、田中氏側は「(リリースで)指摘されるような利益相反や任務違背などの行為は一切行っていない」と主張し、この文書の削除と謝罪告知を掲載するよう求めている。
さらにリリースでは「刑事上の扱いにつきましても、現在、捜査機関に相談を実施している」としているが、田中氏側は「刑事事件としての疑いなど全くない。判決なき有罪認定と同等で、原告の名誉を著しく毀損していることは明らか」と主張。CBJと土屋社長の連帯で1000万円の慰謝料を支払うよう求めている。
要するに田中氏は、CBJが認定した不正行為を真っ向から否定しているのだ。なぜ、このようなことが起きたのか。その理由を今後の情勢見通しを含めて次ページで明らかにする。