F1由来の電動化技術で速さと環境性能を両立
ハイグロスクロームの縦ルーバーを備えたAMG専用フロントグリルを装着。ベースモデル比で全長80mm、ホイールベース10mm拡大している。
バッテリー残量が十分であれば通常はEV走行をする。ワインディングの上りでガンガン踏めばあっという間にバッテリーは空になり、下りではアクセルをあまり踏むことなく流していると残量がみるみる増える。どうやらエンジン出力や駆動力配分、回生ブレーキなど相当に緻密な制御によるアシストを行ってくれているらしい。ドライバーは特に意識することなく、なんの違和感もなく走行することができる。
システムトルクは1020Nmで、0-100km/h加速は3.4秒という数字から想像するほどに野蛮でも暴力的でもない。2リッターエンジンは7000回転あたりまで淀みなくきれいに吹け上がる。それなりに勇ましい音もするがやはりV8と比較すると、どこか物足りない気もする。電動化によって洗練されている印象だ。
排気管内に可変エグゾーストフラップを備えたAMGエグゾーストシステムを採用。ドライブコントロールスイッチなどでサウンド特性が変更できる。
乗り心地もとても良好。四輪それぞれを電子制御する連続可変ダンピングシステムを備えたAMG RIDE CONTROLサスペンションの効果によるものだ。もちろんお好みで「Sport」や「Sport+」といったハードなモードを選択することもできる。また後輪操舵システムのリア・アクスルステアリングを標準装備したことで中高速域での安定性と、駐車するシーンなどでの取り回しのよさを両立させている。
考えてみれば、いまやF１のパワーユニットも1.6リッターターボエンジンに2つのモーターを加えたハイブリッドシステムだ。かつてV12やV10やV8の時代にあった空気を切り裂くようなエキゾーストノートは聞かれなくなったけれど、電動化することでタイムは年々速くなっている。このC63も見た目はふつうのCクラスだけれど、F1由来の電動化技術によって、速さと環境性能を両立するハイテクマシンに仕上がっている。
文＝藤野太一 写真＝郡大二郎、茂呂幸正 編集＝iconic
