短編動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」をスクロールしていた筆者に、女性がスマートフォンでダンという名のボーイフレンドと話している動画が目に入った。「僕のいとしい人。かわいそうに、落ち込んでいるみたいだね」と彼は言った。数回スワイプすると、別の女性がやはりダンという全く同じ声のボーイフレンドと話しているのが目に入った。「君のスタイルが好きだよ、ダーリン」と彼は彼女に言った。ダンは何人も恋人がいるような浮気者ではない。「彼」はボットだ。オープンAIの「チャットGPT」などの生成人工知能(AI)ツールがやさしい人間のボーイフレンドのように振る舞うよう、ユーザー(往々にして若い女性)が促しているのだ。月額20ドルの「チャットGPTプラス」の利用者は、人間のような声で回答を得られる。AIと恋に落ちる男性を描いたスパイク・ジョーンズ監督の映画「her/世界でひとつの彼女」と不気味なほど似た状況だ。