圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の中で著者・森武司氏が「僕に足りないものをみんな持っている」と語ったのが、FIDIA(フィディア)No.2で、Luvir Consulting(ルヴィアコンサルティング)CEOとしても活躍する中川裕貴氏だ。中川氏は、FIDIAの年商を60億円から100億円に引き上げたレジェンドでもある。「人事制度はつくって終わりじゃない」と語る中川氏に、2つのポイントを聞いた。(構成:陽月よつか)

【うまくいっている会社の2つの仕組み】「改良を重ねる」、もう1つは?Photo: Adobe Stock

人事制度をつくる意義とは?

――会社にとって最高の人事制度とは、どんなものでしょう?

中川裕貴(以下、中川):人事制度は、まず人材マネジメント方針を定め、そこから等級制度、評価制度、報酬制度という形でつくっていきます。
制度をつくるステップは、どんな業種職種であろうが、どのくらいの規模感であろうがあまり変わりません。でも、会社によって出来上がる制度は全然違ってくるから不思議です。

というのも、会社が抱える課題やビジネス環境はそれぞれまったく違うもの。それによって社員に求められるスキルや行動も違ってくるわけです。
ですから、そこをしっかりヒアリングして決めていくことが重要になってきます。
あなたの会社の場合は人員規模がこれくらいだから、等級は5段階、いや6段階がいいかもしれないなど、話し合いながら決めていきます。

ヒアリングしていると、「等級は5段階と6段階のどっちがいいんでしょう?」「極論を言うと5段階と8段階ならどっち?」という質問も飛んでくるのですが、どちらも一長一短あり、正直、どちらがいいとは言いにくいですね。
等級が細かければ昇格頻度が増え、社員のモチベーションは上がりやすいかもしれませんが、その分、報酬は上がりづらくなります。
等級一つとってもどちらを選ぶべきかは、会社の置かれている環境や状況で変わってきます。

ですから会社の現状の課題や目指す方向性に照らし合わせて矛盾がないか、しっかり組み立てていくことが大切です。僕が人事制度をつくる際は、だいたい4~6か月ぐらいのプロジェクトでやらせていただいていますね。

――いわゆる“これが正解”“これが絶対いい”といった制度はないのですね。

中川:ないです。制度をつくる際に100%言えるのは、100人中100人が満足する制度は絶対にできないということ。
誰からも不満が出ないなんて絶対ありません。
以前のこの連載でも触れましたが、僕は人事制度とはコミュニケーションツールだと思っています。どんな制度でも、100人いて100人を満足させるコミュニケーションを取るのは、まず難しいですよね。
ただ、これまで100人中20人しか満足できなかったものを、100人中80人を満足できるものはできると思うんです。

今の会社の仕組みに満足して、モチベーションもエンゲージメントも高く働ける人を増やしましょう、制度が理由で離職する人を減らしましょうというのが、人事制度を構築する一番の意義だと思っています。

成果を上げる仕組み(1)
改良を重ねる

――人事制度を実際に用いていくために、大切なこととは?

中川:前述のように、人事制度に正解はありません。ですから、制度をつくって終わりではなく、そのときそのときの状況に合わせて改良を重ねていくしかありません
僕らの人事制度も、毎年、細かいガイドラインを変えたり、賃金テーブルを少しずつ変更したりと、微調整を重ねています。
ガイドラインの詳細はこうしたほうが使いやすいよね、評価シートはもっとこうしたほうがいいなど、実際に運用することで見えてくる課題が見えてきます
これは僕らだけの話ではなく、それぞれの会社でやるべきことだと思います。

成果を上げる仕組み(2)
公平性と納得性を担保する

中川:ただ、社員の満足度や納得感を高めるものは、人事制度だけではありません
僕は人が働くモチベーションになるものに、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2つがあると思っています。
この金銭的報酬をハード面、非金銭的報酬をソフト面と捉えると、ハード面を整えるのが人事制度で、ソフト面を整えるのが労働環境、やりがい、社会的地位、働く仲間だったりします。

ですから、人事制度だけですべてを補うのは難しい。ソフト面とハード面の両方を整え、ハードとソフトを掛け算することで、難しいけれど、100人いたら100人が満足できる、モチベーション高く働ける会社をつくろうというのが人事の仕事だと思うんです。

そのために、いろいろな福利厚生の整備、ジョブローテーション、会社のブランド価値を高め、その会社で働いているステータス感を高めることなど、やるべきことは山ほどあるなと思います。

――ソフト面と掛け合わせて最高の成果を出すために、人事制度で一番大切なことは何でしょう?

中川:ズバリ納得性と公平性ですね。人事制度がなく社長や役員の裁量で一方的に決めてしまうと、社員の納得性や公平性が担保できません。

同じパフォーマンスでも、社長の好き嫌いによって公平性や納得性が担保できないと、優秀な人から辞めていきます。そうならないように人事制度があるわけです。公平性と納得性をしっかり担保するのが、コミュニケーションツールとしての正当な役割だと思っています。