「商談の際、“何を話すか”を考えるよりも重要なことがあります」
そう語るのは、元アメリカン・エキスプレスのトップ営業である福島靖さん。31歳で同社に法人営業として入社し、わずか1年で紹介数・顧客満足度ともに全国1位に輝いた。しかし、入社当初は成績最下位だったそう。もともとコミュ障で、学生時代は友達ゼロ。おまけに高卒。そんな福島さんの成績が急上昇したのは、営業になる前、6年勤めたリッツ・カールトンで得た学びを営業でも実践したからだった。
その経験とノウハウをまとめたのが、初の著書記憶に残る人になる−トップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルールだ。ガツガツしなくても「なぜか信頼される人」になる方法が満載で、営業にかぎらず、人と向き合うすべての仕事に役立つと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、お客様の信頼を得ている営業が「商談の際に考えていること」を紹介する。(構成/石井一穂)

【記憶に残る営業術】ガツガツしなくても信頼される営業が商談の際に考えている「何を話すか」よりも大切なこととは?Photo: Adobe Stock

お客様の信頼を一瞬で得る「3つのステップ」

「この人は私のことを本当に考えてくれているんだ」
 お客様がそう感じて初めて、こちらの言葉に耳を傾けてくれます。

 口で「お客様が第一です」と伝えても意味はありません。
 お客様がそう実感するような行動を起こすことが大切です。

 とはいえ、特別なことをする必要はありません。
 むしろ「小さな気遣い」ができるかどうかが重要です。
 小さな点に気づくからこそ、「そんなことまで!」と、大きな驚きを与えられます。

 その秘訣は、次の3ステップを踏むことです。

① 相手や状況をよく観察する
②「こうすると喜ばれるのでは?」と仮説を立てる
③ 勇気を出して行動する

「そんなことまで!」と驚かれる小さな気遣い

 たとえば雨上がりに喫茶店で商談する際は、事前に別のお店の候補も考え、予定より30分ほど早く着くようにします。
 もしお店の床が雨などで汚れているのに気づいたら、別のお店に場所を変更できるようにするためです。
 床に荷物を置くこともできないでしょうから、荷物が置ける広い席のあるお店を提案します。

 お店の冷房が効きすぎていると感じたら、事前に店員さんにブランケットをお借りしておきます。
 そしてお客様に「このお店、ちょっと冷房が強いので、よかったらこちらをお使いください」と、差し出します。
「寒いですね」と言われる前に用意しておくことで、「ここまで考えてくれているなんて」と、驚きとともに信頼が生まれます。

 最悪なのは、お客様に「寒いですね」と言われて、お店の人に「寒いので冷房を弱くしてください」と頼むこと。
 お客様に申し訳なさを感じさせてしまいます。

商談する「お客様」のことが見えていますか?

 商談の前、商談中、あなたの意識はどこに向いているでしょうか。
 何を話そう。どんな武器を出そう。どう切り返そう。
 話の内容で、頭がいっぱいになっている人も多いと思います。

 たしかに考えるべきことですが、そこに夢中になるあまり、

「目の前のお客様のこと」が見えていない人が多いのも事実です。

 感動を生む気遣いをするには、まずお客様を観察し、そこから仮説を立てて、先回りして行動する意識を持つことが重要です。

(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)

福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表。経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、「俳優になる」ことを口実に18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。同社が大切にするホスピタリティを体現し、6年間で約6,000人のお客様に名前を尋ねられるほどの「記憶に残る接客術」を身につける。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、リッツ・カールトン時代に大切にしていた「記憶に残る」という在り方を実践したことで、1年で紹介数、顧客満足度、ともに全国1位に。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSky(プライベート・ジェット機の販売・運航業)に入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。本書が初の著書となる。