今、就活市場で人気が高いコンサル業界には「ケース面接」と呼ばれる独特の入社試験がある。志望者の問題解決力や地頭力を測る試験だ。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームの入社試験に対して、現役コンサルタントや内定者の解答を集約した前代未聞の1冊だ。本稿では「ケース面接で役立つ5つのフレームワーク」について、本書から一部を抜粋・編集して紹介する。
ケース面接で武器になる「現状分析のフレームワーク」
ビジネスにおけるフレームワークとは、情報や思考をわかりやすく整理するための枠組みを指します。
書店に行けば数多くのビジネスフレームワークを解説する書籍がありますが、本書ではケース面接で実際に使われている「現状分析のフレームワーク」を5つに絞って紹介します。
ケース面接の冒頭では、対象企業が置かれている状況などを具体的に想像し、解決すべき課題や打ち手の方向性を定めていくことが重要になります。
現状分析のフレームワークを覚えておくと、多様な観点から考察できるようになります。
ただし、時間は限られていますので、網羅的な現状分析を行うのではなく、大事なポイントに絞って面接官と認識を合わせるようにしましょう。
PESTLE分析
PESTLE(ペストル)分析は、自社を取り巻くマクロ環境(外部環境)を6つの観点から分析し、急速な外部環境の変化を踏まえた戦略立案等の判断を行うためのフレームワークです。
経営戦略を立案する前提として、政治経済の動向や技術革新などの自社を取り巻く外部環境を把握しておくことが必要です。
時間が限られているケース面接では、PESTLE分析の観点を全て言及する必要はなく、面接官と事前に認識を合わせておきたい重要な外部環境の動向や変化を共有しましょう。
それによって、企業が置かれている状況や今後検討すべきことを具体的に想像し、より納得度の高い打ち手を立案することができます。
3C分析
3C分析は、「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つを軸にして市場環境を分析するフレームワークです。
主に事業戦略やマーケティング戦略を策定する際に使用されます。
・市場や個々の顧客は、どのように変化しているのか
・競合は、どのように市場や顧客の変化に対応しているのか
・市場や顧客、競合の動向を踏まえ、自社の課題や優位性はどこにあるのか
このように、市場・顧客→競合→自社の順番で検討します。
なお、顧客や競合の分析においては、自社にとって重要な顧客は誰か、同一の顧客ターゲットに対して同様な価値を提供している真の競合はどこかを押さえる必要があります。
特に競合は、必ずしも同じ商品やサービスを提供している企業ではなく、代替品を提供する異なる業界の企業などが真の競合となる場合もあります。
ケース面接では変化が激しい業界や流行りのサービスがテーマとして扱われることがありますが、3C分析を活用することで経営環境の変化を踏まえた適切な戦略立案ができるようになります。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは、「5つの競争要因」から競合各社や業界全体の状況と収益構造を明らかにし、自社の利益のあげやすさを分析するフレームワークです。
マーケティング戦略を策定する際に使用されます。
5つの競争要因は「外的要因」と「内的要因」に分けられます。
外的要因としては、①競合の存在、②代替品の脅威、③新規参入者の脅威が挙げられます。
「外部からの脅威に対する障壁は高いのか」、「自社が提供する本質的価値を代替する手段には何が考えられるのか」などと想像することで、対外的な競争優位性を評価できます。
内的要因としては、④売り手の交渉力(仕入れ先の力)、⑤買い手の交渉力(顧客の力)が挙げられます。
たとえば、原材料の多くを単一の仕入れ先に依存している企業は、売り手が販売価格を上げた場合も応じざるを得ません。
また、自社の売上の大部分を単一の顧客に依存していたり、品質や機能に差がないようなコモディティ化した製品を販売していたりする場合は、顧客の高い要求にも対応しなければ売上を失ってしまいます。
ケース面接では、業界構造や自社が置かれている状況を整理して戦略を検討する際にファイブフォース分析を活用するほか、「○○業界の30年後はどうなると思いますか」といった業界の将来予測に関する問題において、業界を多様な観点から俯瞰するために応用できます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、企業の事業活動を可視化し、「どこに」「どのような」付加価値が発生しているかを明らかにするフレームワークです。
具体的には、自社と競合の事業活動を「主活動(価値を生み出すための工程:購買物流、製造、出荷物流、マーケティング・販売、サービス)」と「支援活動(主活動をサポートする活動)」に分けて比較分析することで、各活動でどのように価値を生み出しているのかを明らかにします。
これは、コスト削減の可能性や、新しい付加価値を生み出すための改善点を探索する場合にも活用できます。
ケース面接では、主に主活動の整理を行うことで、競合と比較してどこの活動で差別化を図るのかを明確にし、より具体的な施策を立案することに役立ちます。
SWOT分析
SWOT(スウォット)分析とは、自社の内部環境と外部環境を「強み(Strength)」、「弱み(Weakness)」、「機会(Opportunity)」、「脅威(Threat)」として洗い出して分析する手法であり、企業や事業の現状を把握するためのフレームワークです。
PESTLE分析や3C分析の結果をSWOT分析に落とし込み、上の図のように掛け合わせることで戦略オプションを抽出できます(これをクロスSWOT分析と呼びます)。
時間が限られているケース面接では、自社の強みと市場の機会を掛け合わせた骨太の基本策を中心に回答するとよいでしょう。
(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)