プリゴジン個人のネットワークで回す
ワグネルのビジネスモデル

 もう一つの有力な会社がコンボイ社である。同社は、プリゴジンと決別する前にワグネルのアフリカ作戦を指揮していたコンスタンチン・ピカロフが率いる会社である。EUは2月にピカロフを制裁対象に指定し、彼が2018年7月に中央アフリカ共和国で3人のロシア人ジャーナリストの殺害を計画したと記している。

 プリゴジンが亡くなる直前、ピカロフはコンボイ社がアフリカの8カ国で活動していることを明らかにしていた。「我々はアフリカの軍人に新しい武器を与え、その使い方を教える」と彼はロシアの調査サイト「iStories」に語っていた。

 また23年8月21日に「テレグラム」に掲載された広告でコンボイ社は、アフリカでロシアの偵察・攻撃ドローンを指揮するボランティアを募集していると宣伝していた。

 クレムリンを批判するロシアの富豪ミハイル・ホドルコフスキー氏が設立したロシアの調査機関「ドシエ・センター」によると、コンボイ社はオリガルヒでプーチンの側近であるアルカディ・ローテンベルクや国営VTB銀行から22年に数億ルーブルを受け取っていたという。

 プリゴジンが亡くなる前日、ロシアのユヌス=ベク・イェフクロフ国防副大臣はリビアを訪問し、ワグネルがアフリカに進出した最初の国であるリビアの軍閥ハリファ・ハフタル将軍に会ったことが報じられた。米メディアによると、この時同国防副大臣は「ワグネルの部隊を別の民間軍事会社が引き継ぐ」と説明したという。民間軍事会社が戦闘員たちに給料を支払うが、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の将校たちが厳しく管理することも同時に伝えられたという。

 同紙によれば、この会談にはピカロフ氏も同席しており、彼のコンボイ社が北アフリカのワグネルの利権を引き継ぐ最有力候補になっていると伝えられた。

 プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。

 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう。