「戦争あるところにワグネルあり」民間軍事会社が台頭する3つの理由【元外交官が解説】Photo:SOPA Images/gettyimages

ウクライナ戦争でロシアの民間軍事会社ワグネルが注目されてきた。民間軍事会社とは、ワグネルとは、いったいどんな存在なのか。戦争と傭兵の歴史を振り返りつつ、民間軍事会社の知られざる実態とその脅威について、世界96カ国で学んだ元外交官が解説する。(著述家/国際公共政策博士 山中俊之)

戦争あるところに民間軍事会社ワグネルあり

 ある国で起きた政権側と反政権側の武力紛争。その紛争を勝利に導いたのは、カネで雇われた傭兵によって構成される民間軍事会社だった――。

 こんなうそのような話が、世界で本当に起きている。民間企業が兵士を雇い、軍事力を持って他国の武力紛争に介入しているのだ。

 ロシアの民間軍事会社ワグネルは、シリア、中央アフリカ、マリ、ソマリアなど多数の国々の内戦に関与してきた。そして、ロシアのウクライナ侵攻においても重要な役割を担っている。

「戦争あるところにワグネルあり」――。世界の戦争や武力紛争を、「裏で動かす存在」になっている。

 ワグネルが注目されるようになったのは、2014年のロシアによるクリミア半島併合時だ。ロシア軍から支援を受けて、その意向で動いているとみられるが、詳細は分かっていないことも多い。

 今回は、世界の傭兵の歴史と民間軍事会社の最新事情について考える。実は、日本でも傭兵の歴史があり、傭兵の存在が有名な「戦」を左右していた例もある。また、民間軍事会社ワグネルの、日本人にはあまり知られていない「ビジネス集団」としての側面も深掘りしよう。