「お客様から絶大な信頼を得る人たちは、ある努力をしています」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元トップ営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、身につけた営業スキルをすべて捨て、リッツ・カールトンで磨いた目の前の人の記憶に残る技術を実践したことで、わずか1年で紹介数・顧客満足度全国1位になりました。
その福島さんの初の著書が『記憶に残る人になる』です。ガツガツせずに信頼を得る方法が満載で、「人と向き合うすべての仕事に役立つ!」「とても共感した!」「営業が苦手な人に読んでもらいたい!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「あなたに任せます」と信頼される人の特徴を紹介します。
「あなたに任せます」と信頼される人たち
当事者の言動にこそ、もっとも説得力が宿ります。
人から信頼を得られるのは、自分と同じ立場で考え、発言してくれる人です。信頼を得るために必要なのは説得する言葉を磨くことではありません。できるだけお客様と近い立場になる努力をすることなのです。
とはいえ、当事者になるのが難しいことだってありますよね。それが叶わない仕事があることも、事実だと思います。
たとえば、僕の友人に高齢者施設の介護士がいます。友人はまだ30代であるため、70代や80代の利用者と同じ目線にはなれません。
また、ある知人は富裕層向けの高級物件の売買を担当しています。国内外にある物件が対象で、その金額は数億円から数十億円まで。こちらも、当然ながら当事者として実体験することは難しいでしょう。
では当事者になるのが難しい仕事をしている人たちは、説得力のある人にはなれないのでしょうか?
いえ、そんなことはありません。
先ほどの介護士の友人は、利用者から絶大な信頼を得ています。物件の売買担当の友人は、多くのセレブから「あなたが選んで」と物件選びを任されています。
亡くなった祖母が信頼した「介護士さん」
彼らのような人がしていること、それは「相手を知る努力」です。
当事者になれなくても、相手を知ろうとする姿勢が説得力につながります。
それは知識だけにとどまりません。介護士になるには勉強が必要ですが、資格における知識が豊富であることと利用者が心を開いて信頼してくれるかは別です。足腰が丈夫ではない高齢者は何をされると嬉しくて、逆に何が嫌なのか。知識を得ることではなく、お客様を理解しようとすることが大切です。
これは、亡くなった僕の祖母が入居していた高齢者施設での話です。
最初に入居した施設で、おしゃべり好きだった祖母は突然無口になりました。ですが別の施設に体験入居してみると、祖母はまたおしゃべりになりました。
理由は、その施設の介護士さんでした。
僕や両親にヒアリングをして、家族構成や祖母が好きな食べ物、花、行ったことのある旅行先など、たくさんの情報を集めていたのです。そして、施設を散歩しているとき、「この花綺麗ですね。そう言えば〇〇さんも〇〇に旅行に行ったとき、見られたんじゃないですか」など、語りかけていました。すると祖母は段々と表情が明るくなり、元のおしゃべりに戻ったそうです。
理解しようとするから、相手の心が動く
その介護士さんは、祖母と同じ当事者になることはできませんでした。
でも、誰よりも祖母のことを知っていましたし、知ろうとしていました。自分のことを理解しようとしてくれている気持ちが、きっと祖母は嬉しかったのだと思います。
「指示・命令なんかで人は変わらない。自分が理解されたと思ったとき、人は自分から変わっていく」
これは、僕がお世話になった人の言葉です。
いくら説得しようとも、人の心は簡単には動きません。
「相手を理解したい」という姿勢が伝わることで、あなたのことを信頼できる人だと感じ、心が開き、自ら動いてくれるのです。
(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)
「福島靖事務所」代表。経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、お客様の「記憶に残る」ことを目指したことで1年で紹介数、顧客満足度、ともに全国1位に。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSkyに入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。