錦織圭、マリア・シャラポワ、大坂なおみ、ネリー・コルダ……指導した数々の選手を世界トップレベルに導いてきたトレーナー界のカリスマ、中村豊。彼に指導を受けた選手たちは、アスリートとして大幅なステップアップを遂げています。
中村はトレーニングによってのみ身体能力が向上するわけではなく、必要なのは「トレーニング」「リカバリー」「栄養」の3つのメソッドだと語ります。そして、この3つを適切に行えば、一般の人でも身心が健全に整い、若さを持続できると主張するのです。その実践方法を分かりやすく具体的にまとめたのが、中村の初著書『世界最高のフィジカル・マネジメント』です。本連載では同書から「誰もが自宅で簡単にできるフィジカル・トレーニング」を紹介していきます。
筋肉を鍛えるためには、身体に負荷をかける必要があります。自宅で気軽にできるトレーニングにはスクワットやプランク、腕立て伏せなどがあります。これらは自分の体重によって負荷をかける運動ですが、筋力アップにはより大きな負荷をかける必要があります。「トレーニングチューブ」を用いることで、自宅でも簡単にトレーニンレベルを上げることができるのです。
「トレーニングチューブ」で
自宅エキササイズをレベルアップ
より筋力を増やすには負荷を多くかける必要があります。ダンベルを用いる方法がポピュラーですが、自宅でトレーニングを行う方は、置き場所に困ったり、小さなお子さんがいる場合は安全面での不安もあるでしょう。
保管場所も必要なく簡単に負荷を増やすことができる効果的なアイテムが「トレーニングチューブ」です。値段も安価なものであれば1000円程度で入手できるので、自宅でのトレーニンググッズとして最適です。
今回は、そのトレーニングチューブを効果的に用いたエキササイズを紹介します。股関節周り(臀部、太もも裏)と肩甲骨周辺部の運動機能向上に欠かせないトレーニングとして、多くのアスリートに愛用されています。片足の状態でバランスを取りながら、いかに正しい姿勢を保って上半身の運動が行えるかがポイントになります。
身体のバランスをチェックしながら行う
最強の筋力トレーニング
【写真1】で用いているのが「トレーニングチューブ」です。まず右足でトレーニングチューブの中心部分を踏んで固定させます。トレーニングチューブのハンドル(取っ手の部分)を持ち、両手はリラックスさせます。上半身は肩甲骨を絞り脇を締めて胸を張ります。頭から右足の先までは真っ直ぐに保ちます。
次いで【写真2】のように右足の膝を軽く曲げ、身体を前傾させます。頭から足首までのラインは真っ直ぐに保ちます。ここで大切なポイントは、両腕はリラックスさせながらも、肩甲骨を絞り胸を張った状態を維持することです。こうすることで全身の安定感が増します。
次いで【写真3】【写真4】のように右足で上手にバランスを取りながら、トレーニングチューブを握った両手を真っ直ぐに真横に広げます。トレーニングチューブによって肩甲骨周辺部に強い刺激が生まれます。
この一連の動作を足を入れ替えて5回繰り返してください。フォームが安定してきたら、次第に回数を増やすと、より効果が高まります。
(本記事は、『世界最高のフィジカル・マネジメント』の著者が書き下ろしたものです)
ストレングス&コンディショニングコーチ
1972年生まれ。高校卒業後アメリカにテニス留学。スポーツトレーナーという職業に興味を持ち、カリフォルニア州チャップマン大学で運動生理学、スポーツサイエンスを学ぶ。1998年、サドルブルック・テニスアカデミーのトレーニングコーチに就任。2000年、女子テニスプレーヤー、ジェニファー・カプリアティのトレーナーに就任し、翌年世界No.1に導く。2004年よりIMGアカデミーに所属し、錦織圭のトレーニングを14歳から20歳まで受け持つ。2011年よりマリア・シャラポワの専属トレーナーに就任。シャラポワの黄金期を7年間支える。2020年6月、大坂なおみの専属トレーナーに就任。わずか2ヵ月でスランプに陥っていた大坂を再生させ、全米、全豪と立て続けのメジャータイトル奪取に貢献。世界のプロスポーツ界で最も注目されるフィジカルトレーナーのひとり。トレーナーとしての豊富な経験と知識を生かし、一般の人に向けた入門書『世界最高のフィジカル・マネジメント』を上梓した。