トランプ対米政府の訴訟でジョン・ロバーツ最高裁長官が示した意見は、行政権に関する画期的なものだ。1982年にニクソン対フィッツジェラルド訴訟で最高裁が示した、大統領は自らの職務の「外縁(outer perimeter)」内の行為について民事訴訟から完全に免責されるとの意見に基づくと、この意見は予測可能でもあった。最高裁は1日、公的行為に関して刑事訴追される恐れの方が、行政権の面で一層の弱体化要因になるとの判断を示した。6人の保守派判事のトップであるロバーツ氏は「公共の利益に基づいた行動方針を採りたいと思う大統領は、退任した途端に刑事罰を受ける可能性を恐れて、別の行動方針を選ぶ可能性がある」と述べた。その上で「ある大統領経験者の公的行為が、刑事訴追に関する精査を受けることが当たり前になれば、『行政機関の独立性』が著しく損なわれる可能性がある」と指摘した。