これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、生理学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「コミュニケーションの取り方」から「家での勉強のしかた」「遊び」「習い事」「ほめ方・叱り方」「読書」「英語」「スマホ対策」「ゲーム対策」「食事」「睡眠」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめ上げた力作である」と評する1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋して紹介する(こちらは2020年6月26日の記事の再掲載です)

「自分の頭で考えられる子」の親がしている4大習慣【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

「考えるきっかけ」をつくってあげる

 文部科学省がグローバル化に対応できる人材を育成するため推進しようとしている、小・中・高校生向けの教育プログラムに、国際バカロレアというものがあります。

 国際バカロレア教育は、世界150以上の国・地域にある約5000の認定校で実施され、「なぜだろう?」とくりかえし問いながら、分析を深めていく対話型の授業を特徴としています。

 多くの卒業生が、起業家など社会のチェンジメイカー(変革者)として世界を舞台に活躍していますが、その認定校の先生が、印象的なことを仰っていました。

「皆、正解を知りたがります。そして、どれが試験に出るのですか、とすぐに聞いてきます。受験勉強では『正解は何だ?』とつきつめていくことが多いからだと思いますが、国際バカロレアでは、『根拠があれば、それは1つの答えである』という考えです。だから『自分の意見はどうなの?』『なぜ?』というところを重視しているのです」

 国際バカロレアでは、先生は「教える」というよりも、生徒と共に学ぶ「学習者」であり、授業はあくまでも子どもが主体。子どもが自分の頭で考え、決断し、行動できる力を伸ばしていくという理念です。考える力は、教えたり指示するのではなく、子どもに考えるきっかけを与えることで育めるのです。

 では、子どもに「自分の頭で考える力」をつけてあげるために、親はどうやって考えるきっかけをつくってあげればいいでしょうか?

【その1】答えを教えない

 子どもが何かを聞いてきたら、すぐに答えを教えずに「〇〇ちゃんはどう思う?」「なんでだろうね?」と問いかけます。すぐに答えがわからないワクワク感が、子どもの考えるきっかけになるからです。

 自分で考えようとしないときには、一緒に調べたり考えたりしてあげることで、ただ「答え」を教えるのではなく「学ぶプロセス」を体験させます。

【その2】質問させる

 子どもにたくさん質問をしてもらいます。質問したがらないときには、親のほうから「パパ(ママ)はこう思うんだけど、〇〇ちゃんはどう思う?」などと質問してみます。

 子どもは親を手本に言葉の使い方を覚えていきます。たくさん質問する子どもは、親も子どもにたくさん質問をしているという調査結果もあります。

【その3】あえて反論をする

 ディベートや議論を活性化させる手法で、「悪魔の代弁者」という役割をつくることがあります。これは多数派に対してあえて反論する役割で、子どもに対しても、考えを深めるきっかけをつくれます。子どもの発言に対し、「それって本当かな?」と切り出し、あえて真逆の意見をぶつけてみるのです。

【その4】自分でルールを考えさせる

 子どもが親の言うことを聞かないのは、納得できていないからです。「〇〇しなさい!」という命令に効果がないときには、それも思い切って考えるきっかけにしてしまいます。親の希望を伝えつつ、賛否両論を考えさせるのです。

 たとえばゲームばかりしているときは、「目が悪くなるから心配だ」「〇〇ちゃんの話を聞く時間が少なくなるので悲しい」といった親の気持ちを伝えつつ、子どもには、ゲームをすることのメリットとデメリットを挙げてもらいます。そのうえで、どういうルールにするのがいいか、自分で考えさせます。

 このプロセスには時間がかかりますが、命令して強制するよりも、子どもが納得したうえでルールを決めたほうが行動は変えやすくなります。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』からの抜粋です)

参考文献

イアン・レズリー『子どもは 40000回質問する』(須川綾子訳、光文社)
加藤紀子「ホンモノを見せる教育を...千代田高等学院の個性豊かな教師陣」(リセマム、2018/7/25)