『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』という一冊の本が刊行された。手の付けられない乱暴な子に育った著者が、思春期の頃、おじいちゃんに教わった「人生の教訓」について書いたものである。そして実は、タイトルにある「おじいちゃん」とは、かの有名なガンジーのことなのだ。12歳だった孫の人生を変えたガンジーの教えとは? 世界中の人々が「自分」と向き合うきっかけとなった本書の邦訳を記念して、その一部を特別に公開する。今回は、ガンジーが「政治家」について語ったエピソードを紹介。
有権者として胸に刻みたいこと
私たちは、すべての人類の利益になることを考え、人種や宗教の違いを超えて協力しなければならない。
今、多くの国は、「アイデンティティ政治」の罠に陥っている。人々が狭い世界に閉じこもり、狭い世界の価値観だけで投票している。国全体のことを考えるのではなく、自分が属する集団の利益になることしか考えていない(そして皮肉なことに、自分たちの利益を代表しているように見える党や候補者は、実際はそうでないことが多い)。
狭い世界の外に出て、全体の利益のことを考える。そのときに初めて、真の平等は可能になる。本物の民主主義とは、すべての人が平等であるだけでなく、誰もが社会に受け入れられ、尊重されるような制度だ。
国をほろぼす政治家の特徴
バプジ(祖父)はよくこんなことを言っていた。
「政治家は、真実を謎というベールで包み、本当に大切なことをないがしろにして、小手先の対策でごまかすことが多い」
この言葉をすべての投票所に掲示することができたら、どんなにいいだろう。政治キャンペーンが、個人的な問題や、口先だけの公約で埋め尽くされ、世界全体を見据えた視点や、本当に大切なことが脇に追いやられてしまう。
このように目先のことしか考えないでいると、人々は苦しみ、国は崩壊するのだ。
(本記事は、『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』(アルン・ガンジー著、桜田直美訳)の一部を抜粋・編集したものです)