『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』という一冊の本が刊行される。手の付けられない乱暴な子に育った著者が、思春期の頃、おじいちゃんに教わった「人生の教訓」について書いたものである。そして実は、タイトルにある「おじいちゃん」とは、かの有名な「ガンジー」のことなのだ。12歳だった孫の人生を変えたガンジーの教えとは? 世界中の人々が「自分」と向き合うきっかけとなった本書の邦訳を記念して、その一部を特別に公開する。
一度発した弾丸は、二度と銃には戻せない
私たちは、健康で丈夫な体を作ることには熱心だが、健康で丈夫な精神を作ることにはまるで無頓着だ。自分の精神をコントロールできない人は、すぐにカッとなり、後悔するような言動を繰り返してしまう。
腹が立つようなことは、一日のうちに少なくとも一〇回はあるだろう。私たちはそのたびに、自分で自分の反応を決めている。同僚に嫌味を言われ、思わず嫌味で応酬してしまう。腹の立つメールを読み、反射的に攻撃的な返事を出してしまう。
たとえ相手が愛する家族でも、怒りにまかせて反応し、傷つけてしまうことさえある。がっかりさせられたり、気に入らないことを言われたりすると、思わず攻撃的な態度になってしまうのだ。
しかし、そうして相手に発した言葉は人を傷つける。本当は愛と思いやりの気持ちで接しなければならない人たちの心に、決して癒えることのない傷を残してしまう。
さらに、怒りは、自分でも気づかないうちに自分自身をも傷つけている。誰かを罵倒したときや、残酷な仕打ちをしたときの自分を思い出してみよう。とても悲惨な状態になっているはずだ。体は硬直し、手がつけられないほど怒りの感情が燃えあがる。怒りの炎に焼き尽くされ、他のことにまったく集中できない。怒りは視野を狭くする。その瞬間は、相手を痛めつけることしか考えられなくなる。
時間が経って心が落ち着き、相手に謝ろうとするかもしれない。しかし、たとえ謝っても、自分の爆発をなかったことにはできない。思わずカッとなった気持ちをそのまま爆発させるのは、銃の引き金を引くようなものだ。一度発射した弾丸は、二度と銃に戻すことはできない。
ガンジーが教えてくれた「腹が立ったとき」の賢い考え方
ここで忘れてはならないのは、私たちには、自分の反応を自分で決める力があるということだ。
とっさの反応でまずい結果になりそうだったら、「どんな反応をすれば、お互いにとっていい結果になるだろう?」と考えなさい。そう、バプジは私に教えてくれた。
(本記事は、『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』(アルン・ガンジー著、桜田直美訳)の一部を抜粋・編集したものです)