緊迫の現地滞在で分かった、イスラエル国民の95%が望むこと【佐藤優】イラン大統領選挙で当選したマスード・ペゼシュキアン大統領。2024年7月6日、群衆に向けて勝利のサインを放った Photo:EPA=JIJI

イスラム武装組織ハマスによるテロから始まったパレスチナ自治区ガザでの紛争は、開始から9カ月が経過した。イスラエルの都市・テルアビブで聞いた、現地の声とは。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/梶原麻衣子)

いかなる対価を支払ってでも、人質の釈放を

 イスラム武装組織ハマスによるテロから始まったパレスチナ自治区ガザでの紛争は、開始から9カ月が経過しました。

 私は7月4日から6日までイスラエルの都市・テルアビブで、イスラエルの諜報特務局モサドの高官だった友人や現地の人たちと、率直な意見交換を行いました。短い滞在でしたが、現地の緊迫した雰囲気を肌で感じることができたのは成果でした。

 彼らはネタニヤフ首相に対して極めて否定的で、厳しい口調で批判しており、元モサド高官は「極右派の閣僚2人が辞任すればネタニヤフ政権は崩壊する。その場合、ネタニヤフは裁判で有罪が確定するだろう。そのため、ネタニヤフは極右派に配慮し、合理的な判断ができなくなっている」と指摘。

 また「国民の95%はいかなる対価を支払ってでも、人質の釈放を望んでいる。ハマスの要求に応じて、イスラエルが収監もしくは拘束しているハマスのテロリストを数百人でも数千人でも釈放すればいい」と言っていました。

 もっとも「ハマスと釈放したテロリストに対しては、その後、徹底的な復讐をする」ことが前提となっています。テルアビブでは一般市民からも「復讐は絶対にしなくてはならない」という声を聞きました。日常生活の中で「復讐」という言葉が頻繁に出るという、過去に経験したことがない状況を迎えています。

 日本では「ハマスも悪いが、イスラエルはやり過ぎだ」という論調が多く見られますが、イスラエルの人々はハマス掃討作戦を国際法上の「自衛権」を巡る問題にとどまらず、より根源的な「生存権」を問うものだと捉えています。