
AI時代に急増するデータセンター(DC)需要にどう対応して、日本のデジタル競争力を高めるか。東京・大阪集中から地方分散へインフラを再編し、脱炭素電力の活用を促し、地域経済の活性化に繋げる「ワット・ビット連携」構想を提言してきた三菱総合研究所の政策・経済センター フェロー、西角直樹氏にその概要や具体策を聞いた。連載後編では具体事例を紹介する。(聞き手/ダイヤモンド社論説委員 大坪 亮、文/ライター 奥田由意、撮影/瀧本 清)
香川県の産業誘致策としての計算資源の域内整備
――「ワット・ビット連携3.0」では、データセンター(DC)を現代の社会インフラとして、地域活性化の起点にするという構想ですね。
構想実現には明確な意思と設計が必要です。地域のDCを産業スマート化のためのデジタル基盤として位置づけ、地域データを地産地消で処理しながら、デジタル人材の育成や域外からの産業・人材の誘致につなげる。その効果を地域経済に還流するモデルを構築するところを3.0のゴールに置いています。これができてはじめて、ワット・ビット連携に“魂が宿る”ことになります。
具体的には、ヘルスケア領域では介護施設のスマートケア、農業では大規模稲作のスマート化、モビリティでは地域の自動運転バスなどがあります。
いずれも現場が地方にある産業であり、DCをそのためのデジタル基盤として整備しながら、これらを有機的に連携させます。2040年には上記以外にもあらゆる産業がデジタル化され、こうした現場で大量のデータが生まれるため、地域の計算処理需要が全体の5割以上になる可能性もあります。
私たち三菱総合研究所(MRI)が考えるロードマップでは、こうした地域需要への対応を主な目的とするDC拠点を「ワット・ビット・シティ」と呼んでいます。2040年に大規模集積拠点が5エリアに整備され、同時にワット・ビット・シティが全国20〜30都市に広がっていくものと想定しています。大規模集積拠点と地方都市型DCが相互補完的な役割を担うことで、日本全体のDX・GX・地域活性化が同時に実現できるのです。
――成功事例はありますか。
参考になる一例が、香川県の取り組みです。香川県では、AI向けGPU(画像処理装置)DCを展開するベンチャー企業ハイレゾを誘致しました。
2024年12月、高松市にハイレゾの子会社、ハイレゾ香川のGPUDCが設立されました。ハイレゾは、26年3月に県内の廃校を利用した綾川町DCも開所。ワット・ビット連携の枠組みそのものに沿っているわけではありませんが、地方自治体が主導して計算資源の産業誘致に乗り出した先行事例として注目に値します。







