アベノミクスで大幅な円安・株高が進んでいる。「どんどん円安方向に誘導してインフレ率も押し上げればいい」という意見があるが、それは本質を見誤っている。日本に今必要なのは、強い需要である。しかも、インフレが円安圧力を強める効果もそもそも疑問である。

 日本銀行が2%のインフレターゲットを導入し、黒田東彦・新日銀総裁が異次元の金融緩和を行う中で、大幅な円安・株高が進んでいる。経済全般のセンチメントは明るく、金融資本市場も活況を呈している。

 こうして未曾有の金融緩和を進める日本に、興味を持つ海外投資家は急増している。筆者は2013年1月最終週から7週間のうち、5週間を海外出張に費やし、海外のヘッジファンド等の顧客に日本の現状を説明してまわった。ミーティングは1日6〜7件にのぼり、それほど海外の投資家の日本に対する興味は強かった。

 なぜなら、金融危機に揺れた世界経済の大きな流れの中で、日本が先頭を走っているからだ。欧米の投資家やエコノミスト、当局者は、自国経済が将来直面しそうな状況にどのように対処すべきか、シミュレーションする意味で、日本の動きに(反面教師としても)注目していのである。

 彼らからは「日銀は外債を購入して、米ドル/円相場をどんどん円安方向に誘導し、インフレ率も押し上げればいい」などとも、よく言われる。しかし、こうした意見は問題の本質を見誤っている。