英語を勉強しているが、英会話の上達を実感できない――そんな人に試してほしい1冊が『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』だ。「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、日本語を介さず瞬時に答える「英語の反射神経」を鍛えることができる。本稿では、著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に「なかなか英語を話せるようにならない」という悩みに関して、学習のアドバイスもらった。

英語が自然と口から出るようになる! スキマ時間で簡単にできる英会話トレーニング、シンプルな練習で劇的な効果Photo: Adobe Stock

質問者:20代女性

――中学生から英語の勉強を始め、10年以上にわたり英語に多くの時間を費やしてきました。ですが、いざ英語を話す場面になると、日常的な簡単な出来事すら、言葉につまって上手く話せません。話す力を伸ばすために何をすれば良いのでしょうか。

「他人事の英語」を学んでも話せるようにはならない

森秀夫(以下、森):日本人は一般的に真面目で、英語学習に熱心に取り組む人が多いです。しかし、教科書や問題集で使われている例文が、自分自身に関する内容ではないため、感情を込めて発音や音読の練習をすることが難しく、結果として記憶に残りにくいのかもしれません。

 そこで、学んでいる英文を「自分事」として考えるための学習法「My English 50」をご紹介します。

 まず、1日の行動を思い浮かべてください。

 朝起きてから、朝食を食べ、通勤し、会社での勤務時間を過ごし、帰宅してリラックスしてから寝るまでの流れです。

 では、思い浮かべて行動をスラスラと英語で描写できるでしょうか?

 ここでは具体例として、ある会社員の1日を箇条書きにしてみました。ここに挙げている日本語の文章を英語で表現してみてください。スラスラと英語で表現できるか、挑戦してみましょう。

【朝の習慣】
1 毎日6時に起きます。
2 犬にエサをあげます。
3 朝食を食べます。
4 コーヒーを1杯飲みます。
5 歯を磨きます。
6 いつも急いで化粧をします。

7 仕事用の服を着ます。
8 7時に家を出ます。
9 テレビで最新のニュースをチェックします。
10 そのニュースは仕事に関連しています。

【通勤】
11 電車で通勤します。
12 昨日、定期券の期限が切れました。
13 事故のため電車が遅れています。
14 電車の中で寝てしまいます。
15 会社には時間通りに着きます。
16 ドア・ツー・ドアで約1時間かかります。
17 混んでいる電車のせいで疲れています。
18 リモートワークを選ぶ人もいます。
19 会社に行く途中で英語の勉強をします。
20 スマートフォンの調子が悪いです。

【ランチ】
21 昼休みは正午に始まります。
22 普段は近くのイタリアンレストランに行きます。
23 いつも今日のスペシャルを注文します。
24 クレジットカードで支払います。
25 キャッシュレス決済はとても一般的です。

【職場、仕事】
26 5階でエレベーターを降ります。
27 IDカードを見せます。
28 クライアントとの会議があります。
29 会議は10時に始まります。
30 会議前は緊張します。
31 クライアントが新製品についてプレゼンテーションを行いました。
32 パソコンでメモを取ります。
33 プレゼンテーションはわかりやすかったです。
34 クライアントを工場内に案内します。
35 この書類には多くの個人情報が含まれています。
36 重要な情報は慎重に扱わなければなりません。
37 素晴らしいアイデアを思いつきました。
38 会議は長時間続きます。
39 上司に報告書を提出します。
40 メールに返信します。
41 添付ファイルを開きます。
42 時々、製品に関するクレームを受け取ります。
43 問題に対処します。

【体調】
44 頭痛がします。
45 医者に行かなければなりません。
46 薬を飲みます。

【帰宅後の過ごし方】
47 7時に帰宅します。
48 家族と楽しくおしゃべりをしながら夕食をとります。
49 目覚まし時計を6時にセットします。
50 11時に寝ます。

:いかがだったでしょうか。もし15個項目以上において言葉に詰まるようであれば、まずは自分の日常生活を英語で表現する練習をおすすめします。

 英文の例を次に紹介しますので、参考にしてみてください。

【朝の習慣】
1. I get up at six every day.
2. I feed my dog.
3. I eat breakfast.
4. I have a cup of coffee.
5. I brush my teeth.
6. I always put on my makeup in a hurry.

7. I put on my work clothes.
8. I leave home at seven.
9. I check the latest news on TV.
10. The news is related to my work.

【通勤】
11. I commute by train.
12. My train pass expired yesterday.
13. The train is delayed because of an accident.
14. I fall asleep on the train.
15. I get to my office on time.
16. It takes me about an hour from door to door.
17. I feel exhausted because the train is so crowded.
18. Some people choose to work remotely.
19. I study English on my way to the office.
20. Something is wrong with my smartphone.

【ランチ】
21. Lunch break starts at noon.
22. I usually go to the Italian restaurant nearby.
23. I always order today’s special.
24. I pay with my credit card.
25. Cashless payment is very common.

【職場、仕事】
26. I get off the elevator on the fifth floor.
27. I show my ID card.
28. We have a meeting with our client.
29. The meeting starts at 10.
30. I feel nervous before the meeting.
31. Our client gave a presentation about their new products.
32. I take notes on my computer.
33. Their presentation was easy to understand.
34. We show our client around the factory.
35. There is a lot of personal information in these documents.
36. We have to handle important information carefully.
37. I came up with a great idea.
38. The meeting lasts a long time.
39. I submit a report to my boss.
40. I reply to e-mails.
41. I open an attached file.
42. I sometimes receive complaints about our products.
43. We deal with such problems.

【体調】
44. I have a headache.
45. I have to go to see a doctor.
46. I take some medicine.

【帰宅後の過ごし方】

47. I come home at seven.
48. I enjoy chatting with my family and having supper.
49. I set the alarm clock for six.
50. I go to bed at eleven.

実際に声に出すことが重要

:自分の毎日の出来事を英語にして繰り返し練習することで、話す力は飛躍的に向上します。

 簡単な英語なので、読めば理解できるかもしれませんが、読む力と英語で表現する力は異なります

 繰り返し毎日声に出すことで、実際の会話で自然に口から英語が出てくるようになります。

――どれくらい練習すれば、スラスラ話せるようになるのでしょうか?

:50の英文を完全に暗記し、瞬時に自然と口から出てくる状態になるまで練習しましょう。

 頭の中で言うだけでは、話せるようになりません。実際に声に出すことが非常に重要です。

――職業が会社員でない場合は、どうすればよいでしょうか?

:今回は会社員の1日の出来事をイメージして英文を紹介しましたが、自分自身の毎日の行動をもとに50の英文を作成してみてください。

 例えば、大学生であれば、アルバイトや大学の課題、友人との約束などについて英文を作ってみましょう。

――自分で英文を作れない場合は、どうすればよいでしょうか?

:ChatGPTなどの生成AIを利用してみてください。自分の1日の出来事を日本語で50文書いて「CEFR A2-B1レベルで英訳してください」と指示するだけで、オリジナルの50の英文が簡単に作成できます。

 なお、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)A2-B1レベルは、英検準2級に相当します。英検準2級は、高校生の中級レベルで、基本的なコミュニケーション能力があり、日常生活や学校での簡単な英語のやり取りができることを示します。

 毎日最低でも10回から20回音読し、1ヵ月練習すれば、自然に口からスラスラ出てくるようになるでしょう。50の英文を3分以内に言えるようにすることが目標です。

 英語の勉強といえば、単語を覚えたり、英文法の問題集を解いたりすることが思い浮かぶかもしれません。しかし、簡単な英文や単語であっても、実際に口に出さなければ、会話で使えるようにはなりません。

 最後に、My English 50で効率よくスピーキング力を伸ばすために、下記のチェックリストを意識してみてください。

My English 50の学習チェックリスト

 

1 □ 自分の日常生活を描写した内容の英文になっていますか?

 

2 □ 英語の例文が、覚えやすい適切な長さになっていますか?

 

3 □ 英語の発音をしっかり確認し、音読を行っていますか?

 

4 □ ネイティブスピーカーに発音の指導を受けたり、英語のテキストを音声で読み上げるソフトウェアを使ったりして練習していますか?

 

5 □ 英文を作成する際にChatGPTなどの生成AIを使い、適切なレベルに調整していますか?

 

6 □ 50の英文を3分以内に完全に言うことができますか?

 

7 □ 覚えた英文を疑問文や否定文に言い換えることができますか?

 

8 □ 主語を「I」だけでなく、「My friend」や「My wife」などに置き換えて言うことができますか?

 

9 □ 自分の英語を録音し、ネイティブスピーカーの音声と比較したことがありますか?

 

10 □ 英語特有のアクセントやイントネーションを意識して話していますか?

 ぜひ、My English 50を自分のものとして使いこなせるようになるまで、繰り返し練習してみてください。