全世界1000万人が読んだベストセラー『ザ・ゴール』。1984年に米国で初版が出版されてから40年経つ今もなお、ビジネスの世界を生き抜くための必読書として多くの経営者・ビジネスパーソン・新社会人に読み継がれている。
イスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット博士によって書かれたこの伝説のビジネス書は、Amazon創業者のジェフ・ベゾスも経営陣とともに読み、ビジネスのヒントを得たという。2001年に日本でも出版されてからは、ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥教授やジャパネットたかた創業者の髙田明氏など、トップクラスの知識人・経営者らが絶賛し、座右の書としてきた。
ゴールドラット博士は2011年に逝去したが、最後の著作『ザ・クリスタルボール』がこのたび新装され、『「ザ・ゴール」シリーズ 在庫管理の魔術』として出版された。
売れ残るリスクを抱えてまで在庫を持つべきか、それとも売り逃すリスクがあっても在庫を減らすべきか。同書は、この永遠のジレンマをテーマに、「ザ・ゴール」シリーズで唯一「在庫管理」の真髄を解き明かしたバイブル。
同書の出版を記念して、シリーズの原点となる『ザ・ゴール』のエッセンスをよりわかりやすく漫画化した『ザ・ゴール コミック版』(岸良裕司/監修、青木健生/脚色、蒼田山/漫画)の一部を抜粋して紹介する。(初出:2021年10月19日)
会社の目標(ザ・ゴール)は3つの指標で測る
前回の第2章で、「お金を稼ぐこと」こそ会社の最大の目標であるということに気がついた主人公の吾郎は、ネクストステップとして3つの指標を手に入れる。
3つの指標とは
(1)スループット (2)在庫 (3)業務費用
である。
馴染みのない言葉であるがゆえに、ここで躓いてしまう人も少なくないはずだ、今回はこの3つの指標について詳しく解説をしたい。まず、前提としてこの3つの指標は「会社が稼げているか」を計測するためのものである。
「それが何のための考え方であるか」という点はつねに意識をしてみてほしい。
それでは1つ目のスループットから考えてみたい。
スループットとは販売を通して得たお金のことである。重要なことは「販売で得た」という部分だ。生産で得たお金ではない。どんなに優れた製品をつくってもそれが売れなければ意味がない。つくったものの販売でいくら稼ぐことができたか、それがスループットである。言い換えると、会社に入ってくるお金である。
2つ目は在庫だ。在庫とは製品そのものを指しているわけではない。
スループットが入ってくるお金であるならば、在庫は溜まっているお金と考えるのがわかりやすいだろう。会社の倉庫に眠っている在庫はないだろうか。それらを『ザ・ゴール コミック版』では「これから販売すればお金になるもの」として考える。倉庫にある製品在庫は余っているものではなく、お金に換わる潜在的なものととらえよう。
3つ目が業務費用だ。
これは在庫(溜まっているお金)をスループット(入ってくるお金)に変えるために必要なお金のことである。簡単に言い換えると、出ていくお金だ。製品を完成させるためのコストや輸送料などが業務費用になる。入ってくるお金を増やすためには重要なものである。この業務費用を削りすぎてしまうとその分、入ってくるお金も減ってしまうため注意する必要がある。コスト管理は大事ではあるが、ポイントとして忘れずにいてほしい。
まとめると「会社が稼げているかどうか」を測る指標は3つある。
(1)スループット(これから会社に入ってくるお金)
(2)在庫(会社に溜まっているお金)
(3)業務費用(販売のために会社から出ていくお金)
である。
上記の3つの指標をぜひ実務で考えてみてほしい。
なかなか成果が出せていない会社は、どこかバランスが崩れているはずだ。