日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」(株式会社MFS)を運営する塩澤崇氏が、住宅ローンにまつわるお金の新常識を解説した決定版『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』を5月に上梓した。これから借りる人だけでなく、すでに借りている人が読んでも役立つアドバイスが満載の本書は「もっと早く出合いたかった」と反響を呼んでいる。今回は塩澤氏が、「モゲチェック」によるユーザー調査をもとにした最新の住宅ローンランキングを紹介する。
金利が上がっても、住宅ローンは断然「お得」
2024年7月に日銀が利上げを発表し、住宅ローン金利はこれまでのように低下する一方ではなくなりました。しかし近年の銀行間の競争激化により、住宅ローンを非常に低金利で借りられる局面は続いています。金利だけでなく、ネット銀行を中心に団体信用生命保険(団信)が年々グレードアップし、がんをはじめとする多くの疾患を保障する商品もどんどん出てきたことで、良い商品の「お得度」は以前にも増して高くなっています。
住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」のユーザーの動きを見ると、このような商品の改善に敏感な方が多いこともわかってきました。一方で、商品の中身だけでなく、さまざまな手続きが必要な住宅ローンの申込に適切なフォローができているかといった評価も重要です。
そこでモゲチェックでは、ユーザーの動向や評判を調査し、「本当にいい住宅ローンランキング」を半年ごとに発表しています。今、ユーザーから評価されている住宅ローンはどれなのか、ユーザーが選ぶ「本当にいい住宅ローンランキング」の2024年上期の最新結果をご紹介します。
住宅ローンを借りたユーザーが評価する銀行は?
「本当にいい住宅ローンランキング」は、注目度・人気・金利満足度・団信満足度・諸費用満足度・手続き満足度・顧客対応満足度の7つからなります。注目度と人気はモゲチェック利用者の動向をもとに分析しました(集計期間:2023年12月21日~2024年6月20日)。その他は、住宅ローン利用者に対してウェブアンケート(2024年7月8日~30日)を行い、結果を得られた298人の回答をもとに算出しています。
住宅ローンの「注目度のランキング」1位は?
まずは注目度のランキングです。これはモゲチェックから銀行のウェブサイトへ遷移した回数の順位で、その銀行のローンの詳細を知りたいと思った人が多いことを意味しています。
結果は、1位がauじぶん銀行、2位がSBI新生銀行、3位がPayPay銀行でした。auじぶん銀行はトップクラスの低金利と充実した保障の団信が魅力で、まずはauじぶん銀行をチェックするユーザーは多いです。2023年下期に続いて1位にランクインしました。
2位のSBI新生銀行、3位のPayPay銀行は金利引き下げキャンペーンが多くのユーザーの注目を集めました。金利は毎月返済額に直結しますので、好条件のキャンペーン金利を逃さないのは賢い利用法です。
住宅ローンの「人気ランキング」1位は?
続いては人気ランキングを発表します。これは実際に事前審査を申し込んだ件数の順位で、その銀行で実際にローンを借りたいと決めた人が多いことを意味しています。
1位は、注目度と同じくトップクラスの低金利と充実した団信が強みのauじぶん銀行となりました。こちらも2023年下期に続いてのトップです。
2位はPayPay銀行で、金利引き下げキャンペーン中の申込がずば抜けて多くなっています。3位は住信SBIネット銀行で、低金利に加えてがん以外の疾患でも罹患時に住宅ローン残高が保障される「スゴ団信」が幅広く注目されました。団信の価値を含めた総合評価で申し込んだ人が多かったのだと考えられます。
住宅ローンの「金利満足度」1位は?
次は金利満足度の結果です。
近年は「頭金を10%入れた場合」などの条件付きで金利を引き下げる銀行も多いのですが、1位のPayPay銀行は、特別な条件なしに最低水準の金利が適用されることが高評価につながりました。2位の住信SBIネット銀行(店舗申込)は、対面相談を受けながら比較的低金利で借りられることが特徴です。対面で相談したい人への満足度が高かったものと思われます。
住宅ローンの「団信満足度」1位は?
団信満足度のランキングも見てみましょう。
「がん50%保障+4疾病50%保障+全疾病保障」が無料付帯するauじぶん銀行が1位になりました。PayPay銀行、住信SBIネット銀行(WEB申込)もがん50%保障や3大疾病50%保障が無料付帯する点(ただし、年齢制限あり)が評価されています。
住宅ローンの「諸費用満足度」1位は?
続いて諸費用満足度です。
住信SBIネット銀行が1位と3位にランクインしました。近年、諸費用は融資額の2.2%(税込)で横並びであり、ランクインした銀行も基本的にこの手数料です。そのため、評価点が3点台と高くなく、ユーザーのコメントでも「妥当」「普通」といった評価が目立ちました。
住宅ローンの「手続き満足度」1位は?
そして手続き満足度です。住宅ローンの申込には必要書類が多く、やり取りの回数も多くなります。手続きのわかりやすさやサポート体制などを総合的に評価するランキングとお考えください。
1位の住信SBIネット銀行(店舗申込)と、3位のイオン銀行は対面タイプです。案内を受けながら進められることに安心感をもち、高評価とする回答が多くなりました。一方、2位のPayPay銀行はオンラインのみで手続きが完結します。来店して対面で手続きを行うことを面倒に感じる層から評価を集めるという二極化の結果となりました。
住宅ローンの「顧客対応満足度」1位は?
最後に、顧客対応満足度です。
1位の三井住友銀行には「対応が素晴らしかった」「丁寧でわかりやすかった」などの声が多く集まりました。2位のイオン銀行、3位の住信SBIネット銀行(店舗申込)とともに、店舗対応を活かした丁寧な案内に対するニーズに応えた銀行が顧客対応満足度につながっています。
7部門全体を振り返ってみた総合力では?
以上7部門を集計すると、auじぶん銀行が3部門で1位となりました。また、複数のランキングで3位までに入った銀行も多く、これらの銀行はユーザーからの評価が高いと言えます。
住宅購入時には不動産業者の提携ローンを紹介されることも多いですが、それを利用しなければならないという縛りはなく、自由に選んで申し込むことができます。住宅ローンは金額が大きいだけに、安易に決めてしまうのではなく、ランキングも参考にじっくりと選んでいただければと思います。
株式会社MFS 取締役COO
2006年、東京大学大学院情報理工学系研究科修了(専攻:数理情報学)。同年よりモルガン・スタンレー証券株式会社にて住宅ローン証券化ビジネスを推進。2009年、ボストン コンサルティング グループに入社し、金融機関向けの戦略コンサルティングに従事。2015年9月より、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの取締役COOとして金融機関提携・オペレーション・事業提携・広報を管掌。全国紙でのコメント掲載やTVへの出演実績も多数。『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』が初の著書。