投資をしてみたいがなかなかその勇気がない。そんな人も多いのではないだろうか。「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回お話を伺ったのは、現役のお笑い芸人でありながらデイトレーダーとして大成功し、いわゆる“億り人”になったハニトラ梅木氏だ。そんな梅木氏は、『スタートアップ芸人』をどう読み解いたのか。今回のインタビューでは、デイトレードで2000万円が160万円に激減した当時の心境などを伺った。(ダイヤモンド社書籍編集局)

“億り人”はなぜ挫折しなかったことを悔やむのか?Photo: Adobe Stock

株で失敗しても命まで取られない

――前回のインタビューで、デイトレードで元金35万円を2000万円に増やすも、その後160万円に激減して……というお話を伺いました。その先はどうしていこうと思われていたのですか?

ハニトラ梅木(以下、梅木):2022年の話で、もうコロナ禍も終わっていました。その時はじめて、ちゃんと働いたほうがいいんじゃないかという葛藤が生まれたんです。

そこで、就職も含めて本気でライフプランをシミュレーションしてみたんですが……僕は38歳で、社会人経験ゼロだったんですね。だから、今さら就職したところで限界があるだろう、株で勝負したほうが稼げるチャンスはあるはずだと思ったんです。

つまり自分的には、就職よりも株で稼ぐほうが“現実味”があった。それに、もし株で失敗したとしても、命まで取られるわけではないですから。

――すごい覚悟だと思います。でも、デイトレーダーは芸人との兼業で、さらにパチンコライターや怪談YouTuberもされていますよね? 株に“全振り”しようとは思わなかったのでしょうか? 例えば、芸人を引退しようと思ったことは?

梅木:森社長は大きな挫折を体験して、芸人をキッパリ辞めていますもんね。その上で、紆余曲折ありつつも起業一本で大成功している。

確かに精神的には、そのほうが次のステップへの良い原動力になると思います。僕はそこまでの挫折を経験しなかったので、今も芸人のまま居続けているのかもしれません。
しかし僕に関して言えば、芸人を辞めたとしても、何かが大きく変わるわけではなかったんですよ。

まずは僕の経歴をざっとお話しさせてください。
芸人生活14~15年目に上京して、5年が経過。東京でお笑いの仕事が増えると期待していましたが、食べていけるほどではありませんでした。

ただ、その間にパチンコの知識をめちゃくちゃ増やしたので、パチンコライターの仕事を得て、芸人としては“パチンコ芸人”的な仕事もいただけるようになっていて。

だから僕個人としては、芸人の王道たる漫才やコントにこだわる必要がなくなったんです。感覚的には、「芸人という大きな職種の中に、パチンコという“種目”を増やした」。あるいは「同じ職種の中でも、力を入れる分野を変えた」。そういう感じでしたね。

精神的には芸人をやめている!?

――梅木さんはコンビを組まれていますが、相方さんはどうされていたんですか?

梅木:パチンコ関連の仕事が増えた段階で話し合いました。相方(ボケ担当の八木優子)はネタをやりたいという意向だったので、岩村ちゃんというもう一人の女性に加入してもらって、トリオ体制にしたんです。僕がパチンコの仕事で出られないときも、2人でネタができればいいなと。

――梅木さんとしては、現在も芸人がメインで、あとは副業という感覚でしょうか?

梅木:本業か副業かは稼ぎで比較されることがほとんどなので、そうするとデイトレーダーは桁違いですからねぇ(笑)
ちなみにX(旧Twitter)のプロフィールには「現在無職」と書いています。これも本音なんですよ。

「芸人をなぜ辞めなかったのか」というと、辞める必要がなかったから。ただ、これまでの話と相反するようですが、精神的には一度辞めているんですよ。それがパチンコライターの仕事を始めた時のことで、「今まで芸人1本で食っていけなかったんだから、ここらで別の方向にバットを振ってみよう」と思ったんですね。すると、つき合う人もどんどん変わっていったんです。

――なんだか哲学的な話ですね。

梅木:『スタートアップ芸人』でも、森社長が芸人以外のことに挑戦する中で、付き合う人が変わったり、仲間が増えていくエピソードが紹介されていますよね。

僕は芸人をやめるきっかけが無いままデイトレードの世界に足を踏み入れたので、大きな挫折を経験して大成功を収めている森社長が羨ましくもあります。

『スタートアップ芸人』は大きな挫折の経験がある人にもない人にも、刺さる本ではないかと思います。