習近平国家主席とトランプ大統領習近平国家主席とトランプ大統領 Photo:中国通信/JIJI, AFP=JIJI

中国を世界経済に取り込めば、市場経済の発展とともに政治も自由化へ向かう――。アメリカは長年、その前提で中国との経済統合を進めてきた。しかし、中国企業の台頭や経済安全保障をめぐる対立、台湾有事への警戒の高まりを受け、その「自由貿易が民主主義を広げる」という発想は大きく揺らいでいる。トランプ政権とバイデン政権がともに対中強硬路線へとかじを切った背景には何があるのか。※本稿は、ジャーナリストのデイヴィッド・J・リンチ著、寺尾時彦訳『グローバリゼーションは失敗だったのか 下』(原書房)の一部を抜粋・編集したものです。

中国で稼いだアメリカ企業に
逆風が吹き始めた

 世界経済の最終的な形は、アメリカと中国が安定した関係を維持するための持続可能な根拠を見出せるかどうかにかかっている。米中間の友好関係の原動力は時代とともに変化してきた。1970年代から80年代には、ソ連への共通の対抗意識が超大国アメリカと毛沢東の孤立した貧しい共産主義国家を結びつけた。ソ連崩壊後は、相互の経済的利益を基盤として関係が再構築された。中国は西側の支援で経済を発展させ、その見返りにアメリカの企業は莫大な利益を得るという構図だった。

 しかし習近平の中国が内向きに転じ、多国籍企業コミュニティが中国政府の国内企業優遇政策に耐えきれなくなったことで、この経済的根拠はほころびを見せている。

 この変化はゼネラルモーターズの運命を見ると明らかだ。かつて中国で成功したゼネラルモーターズは、今では苦戦を強いられている。2010年から2022年まで毎年、同社は中国での販売台数がアメリカ国内を上回っていた。アメリカ産業の象徴である同社は、中国政府の決定にますます依存するようになっていたのだ。