Sangwan氏は、これらの研究は、若年発症大腸がんの研究を進める上で多くの示唆をもたらしたが、がんリスクに関わる要因が増えることにより、研究結果の解釈やその後の計画も複雑になると指摘する。

 さらに、腸内微生物が代謝産物を消費して独自の代謝産物を生成するという代謝産物と腸内微生物叢の相互作用も、問題をさらに複雑化する。

AIアルゴリズムを構築して
腸内微生物叢の解析

 そこでSangwan氏らは、AIアルゴリズムを構築して、若年発症大腸がん患者20人(以下、若年患者)と60歳以上で大腸がんを発症した患者44人(以下、高齢患者)を対象に、血漿のメタボローム解析と腫瘍組織の16S rRNAアンプリコンシーケンス解析による腸内微生物叢の解析を行った。

 その結果、若年患者と高齢患者の間に観察された違いの多くは食生活の違いに起因することが明らかになった。

 具体的には、若年患者では高齢患者に比べて、アミノ酸の消化により生成される代謝産物であるアルギニンのレベルと、尿素回路に関連する代謝産物のレベルが高い傾向にあることが明らかになった。尿素回路は、体内でタンパク質が消化される過程で生成されたアンモニアが血液から濾過され、最終的に尿とともに排泄されるプロセスである。

 これらの結果について研究グループは、「若年発症大腸がん患者のこれらの代謝産物レベルの上昇は、赤肉や加工肉の長期にわたる過剰摂取により説明できる可能性がある」との見方を示している。

 またSangwan氏は、「本研究結果は、若年発症大腸がんの主な要因が食事であることを明確に示している。リスクに関連する主な代謝産物はすでに判明しているのだから、今後はこの結果に沿って研究を進めていけばよいだろう」と話している。

 研究グループは、本研究結果は良い知らせだとの見方を示す。なぜなら当初、研究グループは、大腸がんリスクを下げるためには腸内微生物叢を大幅に変える必要があると考えていたからだ。

 論文の上席著者であるクリーブランドクリニックの消化器がん専門医であるSuneel Kamath氏は、「腸内微生物叢を変えるのは非常に複雑な上に難しい。食生活の変更も容易なわけではないが、腸内微生物叢を変えることに比べるとはるかに容易だ」と話す。

 さらに、研究グループは、大腸がんの検査としても、便サンプルの遺伝子配列を調べて腸内微生物のレベルを確認するより血液検査で代謝産物を調べる方が簡単な可能性があることも利点の一つだと述べている。

 研究グループは、次のステップとして、より大規模な大腸がん患者を対象に研究結果を検証する予定だとしている。また、食事や薬剤によって代謝産物のレベルを下げることが可能かどうかも検証したいと話している。(HealthDay News 2024年8月16日)

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