職場には「すぐあきらめる人」と「絶対あきらめない人」がいる。一体、何が違うのだろう?
本連載では、ビジネスパーソンから経営者まで数多くの相談を受けている“悩み「解消」のスペシャリスト”、北の達人コーポレーション社長・木下勝寿氏が、悩まない人になるコツを紹介する。
いま「現実のビジネス現場において“根拠なきポジティブ”はただの現実逃避、“鋼のメンタル”とはただの鈍感人間。ビジネス現場での悩み解消法は『思考アルゴリズム』だ」と言い切る木下氏の最新刊『「悩まない人」の考え方 ── 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』が話題となっている。本稿では、「出来事、仕事、他者の悩みの9割を消し去るスーパー思考フォーマット」という本書から一部を抜粋・編集してお届けする。

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「相手によく思われたい」
「優秀な人だと印象づけたい」
「面白い人だねと言われたい」

 そんな思いを持っている人は少なくない。

 いくら「他者からの評価を気にするな」と言われたところで、人間には「人から好印象を持たれたい」という根源的な欲求がある。

 だからこそ、「他者からどう思われるか」に人は悩みやすい。

 これに関して意識するといい思考アルゴリズムをお伝えしておこう。

「第一印象がすべて」は本当か?

 他人の目があまりにも気になる人は、他人に意識が向いているようで、じつは自分のことしか考えていない。

「自分のことを知ってもらおう」とばかり考えていて、相手に対する興味を持てていないのが原因である。

 だから、そんな人は「相手のことを知ろう」と意識するだけで、悩みの大部分が解消する。

 世の中では、第一印象が重要だとされている。
 もちろん、第一印象がいいに越したことはない。
 最初に相手の心をつかめれば、仕事でもいろいろなプラスが期待できる。

 しかし、少なくとも私には、初対面の相手にいきなり好印象を抱かせるだけの器用さはない。
 ちょっと話しただけで相手から好意や敬意を得られる人がいるが、私にはそうしたスター性はなさそうだ。

 そこで私は、第一印象で悩むことをやめた。
 初対面のタイミングで相手から「スゴい」「面白い」と思われようとする道をきっぱり捨てたのである。

 よく知らない相手に好印象を与えようとしても、ただ空回りするだけで終わる。これはあまりにも不毛だ。

 また、私はそもそも「たくさんの友人」や「広範な人的ネットワーク」をつくりたいわけではない。
 仕事にしろ人生にしろ、数少ないメンバーと深くつながっていられればいい。だから、第一印象で勝負して、たくさんの人に好かれる理由がないのだ。

「第二印象」を磨け──凡人のための「最強の対人戦略」

 その代わり、私は「第二印象」をよくしようと決めている。つまり、二度目に会った人からよく思われることを目指しているのである。

 そこで私は、初対面のときは「相手の価値観を知ること」に注力するようにした。
 1回目の出会いは「ひたすら相手のことを知るターン」であり、「こちらから自分の話をするターン」ではない。
 前提を変えることで、初対面の場に「具体的な課題」を設定したわけだ。

「この人は何を大事にしているのだろう?」
「どんな価値基準を持って生きているのだろう?」

 相手が話していることにひたすら耳を傾け、それを理解することに集中する。これを経たうえで、同じ人ともう一度出会うと、格段にやり取りしやすくなるのに気づくはずだ。

 相手の価値観もよくわかっているので、好印象を持たれる行動も取りやすい。

 私のような凡人にしてみれば、「第二印象」への注力は、かなり理にかなった対人戦略である。

 いきなり人に好かれる「魅力に満ちた人」は別として、ふつうの人はぜひ試してみてほしい。

初対面が「余裕」になる考え方

 もちろん、相手の価値観に合わせて行動したからといって、確実に好印象を得られる保証はない。

 だが、少なくとも「第一印象での勝負」を捨てるだけで、初対面の相手に妙な緊張感や焦りがなくなり、リラックスしながら会話を楽しめるはずだ。これもまた「第二印象」戦略のメリットである。

 また、第一印象でいきなり好かれるのと、「第二印象」でじわっと好かれるのとでは、その後の信頼関係に差が出てくる。

 第一印象がよすぎると、ちょっとしたことで相手を失望させたり、一気に当初の熱量が冷めてしまったりすることがある。

 一方「第二印象」で相手にポジティブな感情を抱いてもらえた場合には、互いの波長や考え方が合っている可能性が高いので、より強固で持続的な関係性が構築できる。

 現時点で第一印象でうまくいっている人は、これまでのやり方を続ければいいが、とにかく人脈を広げたい人には、あまり効率のいいやり方とはいえないかもしれない。

 また、どうしても「2度目の出会い」につなげる必要がある場面(飛び込み営業や婚活パーティなど)では、これとは違った戦略が求められる。

 そう考えると、この思考アルゴリズムは決して万人向けではない。

 ただ、初対面に悩んでいる人は、「第二印象」での勝負へ発想を切り替えてみてほしい。これだけで、相当ストレスが減るはずだ。

(本稿は『「悩まない人」の考え方──1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』の一部を抜粋・編集したものです)