不肖フェル、本名を明かさずにクルマのコラムを書いたり、マスクをかぶってメディアに顔を出したりしておりますが、これは世を忍ぶ仮の姿。私の本業は、半導体業界のとある企業に勤めるマジメな会社員であります。いつもは注目のクルマの試乗記や開発者インタビューをお送りしている本連載ですが、今回は趣向を変えて、私の本業である「半導体とクルマ」をテーマにしたエッセイをお送りします。(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)
今回は趣向を変えて「半導体とクルマ」をテーマにお送りします
今回は個別のクルマの話ではなく、私の本業である、半導体とクルマの関わりについて、とあるエピソードを元にして書いてみたいと思います。本題に入る前に、なぜ本稿で急に半導体の話をしようと思ったのか、その背景について説明しておきます。
複数のメディアで自動車のコラムを書いておりますが、私の本業は半導体関係の会社に勤務する会社員でして、毎日セッセと出勤しています。ええ、在宅勤務ではなく週5でフルの出社です。
つい先日の話です。業界のカンファレンスで、某自動車メーカーの偉い方とご一緒する機会がありました。この日はフェル業ではなく勤め先の社員として出席しており、胸には会社の名刺を入れたホルダーを付けていました。もちろんこの偉い方は私がフェルであることをご存じなく、堅気のリーマンと思いこんでおられます。だから後々ご自身が本稿のネタにされるとはつゆほども思っていない。「知らぬが花」とはこのことです。
カンファレンスの午前の部が終わり、軽く昼飯でも食おうか、と相成りました。席につきナプキンを膝にかける。注がれた水で口を湿らすと、偉い方は開口一番こう言いました。
「おたくはいいねぇ。儲かっていて」
いやぁそれほどでも……とクレヨンしんちゃんばりに頭をかいてみせますが、数字を見れば一目瞭然。「それほどでも」も何もない。確かにウチの会社は儲かっている。粗利も経常利益も夢のように良い数字が何年も続いています。ビバ半導体。
偉い方は続けます。「まったくやっていられない」