フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

今年35周年を迎えるマツダの2シータースポーツカー、ロードスター。2015年デビューのND型ロードスターは、今年、マイナーチェンジという名の大幅な改良を行った。その乗り心地は試乗編(https://diamond.jp/articles/-/345396)に書いた通りだが、なぜモデル末期といえるこのタイミングで大幅な改良を行ったのか? さらには、デビューした2015年よりも去年のほうが売れており、さらにはモデル10年目となる今年、過去最高の売り上げを達成しているという。「趣味のクルマ」であるロードスターに今、何が起こっているのか?開発者にじっくりと裏話を聞いてきた。(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)

ND型ロードスター、10年目に入り
過去最高の売り上げを記録のナゾ

 4代目マツダロードスター(ND型ロードスター)が、販売絶好調だ。

 今年でデビュー9周年。既に「モデル末期」と呼べる時期にあるこのクルマが、なぜ売れ続けているのか。その秘密に迫る。お話を伺うのは、ロードスター開発主査の重責を務められる齋藤茂樹さんだ。

マツダ 商品開発本部 主査 齋藤茂樹氏マツダ 商品開発本部 主査 齋藤茂樹氏(右奥)と筆者(左) Photo by AD Takahashi

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):ロードスターの売り上げが絶好調と聞いています。

マツダ 商品開発本部 主査 齋藤茂樹さん(以下、齋):はい。おかげさまで絶好調です。ロードスターは、オープン2シーターのスポーツカーとして世界的に見ても稀有な存在です。(ND型の)デビューが2015年5月なので、丸9年が経ち10年目に入りましたが、今でもコンスタントに世界で年間2万台前後は売れ続けています。そして10年目の今年になり、過去最高の売り上げを記録しています。ND(現行型の形式番号)を売り出した初年度よりも、今現在のほうが売れているんです。

F:自動車の販売は、新型が出ると待ち望んでいた人がワッと買う、いわゆる“新車効果”が出て、初年度がピークになる。それから漸減していくのが普通ですよね。それなのにNDは10年目に入った今が一番売れていると。

齋:はい。NDは初年度でも国内で1万台には届きませんでした。23年は1万台ギリの9800台までいきました。今年は国内1万台に届くと思います。

F:惜しい!去年はあと200台で大台達成だった(笑)。

齋:本当はいけたんです。受注はいただいていたのですが、生産が追いつかなかった。最初からキチンと生産計画を考えていれば、1万の大台は間違いなく達成しました。まあこれには「コロナ特需」という側面もありますが……。