「日本だと飲食は大変だというイメージがあるがカナダでは違う。サーバー(接客をする人)でも資格を取ったり、勉強したりする。サービスに対してチップが支払われる。シェフはもっと地位として認められている」

 会社にとっても、日本人を雇うことは、ブランドイメージを高めることができる。日本人が自ら厨房に立つことで、本格的な日本食を楽しめる店だとの認知につながるからだ。

店長クラスで年収700万円「カナダのラーメン店」で日本人が働くには?『ルポ 若者流出』(朝日新聞「わたしが日本を出た理由」取材班、朝日新聞出版)

 このため、日本人の働き手を確保する仕組みも独自に設けている。2016~18年には、六本木や渋谷にも出店した。将来カナダで働いてくれる人材を、日本の店舗で育てることが狙いの一つだ。日本人が就労ビザを取得するにあたって、会社側がジョブオファーを出したうえで日本人に就労ビザを取得させるには、ビザ代や渡航費などを負担する必要があり、仮に渡航後に離職されてしまうと大きな痛手となる。そのため、まずは日本国内の店舗で働いてもらうことで、人材の適性を見極めることができ、ミスマッチを減らせるという。日本の店舗では、カナダでの勤務経験があるスタッフもいるため、現地での働き方や生活について先輩社員が教えることもできる。

 日本とは異なり、移民の多いカナダだからこそできる経験もある。トロントで働くことで、こうした文化にも触れてほしいと考えている。生活を充実させたり、学んだり、経験したりできるチャンスがあふれているということを自分が体感したからこそ、カナダへ飛び立とうとする人材の後押しになりたいと願う。