「日本のバイト感覚で来ないで」豪レストラン、ワーホリの若者に注文写真はイメージです Photo:PIXTA

最低賃金が日本のおよそ2倍であるオーストラリア。ワーキングホリデーを利用して出稼ぎに行く若者が増えている。一方で、ワーホリ人材を雇用する側が求めている基準は決して低くはないようだ。※本稿は、上阪徹『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。

日本のバイト感覚で来ないでほしい
現地レストランマネージャーの本音

 実際にワーホリ人材を採用する側はどんなことを考えているのか。日本はもちろんアジアでも展開し、シドニーでも複数店舗を展開する日本食レストランチェーンの女性マネージャー・Sさんが、匿名で話を聞かせてくれた。

「この2カ月は、サイトを通じての応募や直接、履歴書を持ってくる人を合わせると1日10人以上の応募があります。まずは面接をして、トライアルをして採用というプロセスになりますが、面接まで進まない人のほうが多い状況です」

 やはりコロナ禍が明けて国が開いた直後の2022年2月、3月頃は人が足りなかったという。そのタイミングでは、育成という考え方も視野に入れて人を採用していたが、今はそうではない。

「アジアの方にはお店の名前が知られていることもあって、いろいろな国の方からの応募があります。今、問うているのは、サービス業、ホスピタリティの経験があるかどうかです」

 このレストラン自体、日本ではカジュアルな雰囲気を持たれているが、オーストラリアではもう少し高級路線になっている。

 ところが、日本の飲食業でのアルバイトの感覚でやって来る日本人は少なくないらしい。日本の店のイメージで、ここなら入りやすいだろうとトライしてしまうとイメージギャップが生まれる。

 英語力に関しても、語学学校の能力別クラスで上から2番目くらいまでを求めているという。3番目で採用するのは、まわりの状況を見る力など、英語力をカバーする何かを持った人材だ。

「昔よりは英語ができる日本人の若者も増えました。できる若者とできない若者の差がすごく激しくなってきていると感じています」

 ただし、力量があれば時給も変わっていく。どんなタスクができれば時給が上がるのか、明らかになっているという。

 どのくらい働けるか、どのくらい稼げるのかは、能力次第、努力次第なのである。

飲食店や農作業だけではない
ITエンジニアという選択肢

 ワーホリで働く、というと飲食店がイメージしやすいという人も多いが、働く職種や業種に制限はない。そこで、もともと日本で培ったスキルを活かして働くという方法もある。例えば、ITエンジニア。

 ワーホリで入国した若者を業務委託のITエンジニアとして採用している会社「Sazae」の社長、溝尻歩さんに話を聞くことができた。