外資系企業にとって円安は「賃金安過ぎ」日本人を獲得する絶好のチャンスだ。ターゲットは、三菱商事やトヨタ自動車など日本を代表する企業の役員級のみならず、部課長級にまで及んでいる。特集『貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛』(全13回)の#5では、人材仲介会社への取材で判明した、年収500万円から1100万円に倍増したシステムエンジニアなど、転職で給料が大幅に増えた16職種の実額を公開する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
海外へ「出稼ぎ」よりも
外資系に転職で年収増
今年10月に外国為替相場で1ドル=150円を突破する歴史的な円安水準へ突入すると、各メディアで「出稼ぎで給料2倍!」といったフレーズが躍るようになった。
賃金が伸び悩む日本を脱出して海外で働くことにより、収入アップと円安の恩恵を受けようと「出稼ぎ」が相次いでいるという。
ただし、生活環境が全く異なる海外で暮らすのは、“大仕事”。インフレで物価上昇が進む国もあり、収入が上がっても支出は増え、“実入り”は変わらないということもあり得る。
実は、海外に飛び出さずとも、日本で年収増のチャンスは十分にある。それが、外資系企業への転職だ。幸いなことに、外資系企業は優秀な日本人採用に意欲的なのである。賃金が伸び悩んでいる「安い日本人」は、外資系企業にとって大きな魅力に映っている。
さらに、米中対立やロシア・ウクライナ戦争でグローバル経済のデカップリング(分断)が進むことも大きい。地政学リスクが低い日本は、サプライチェーン再構築先の有望なエリアとして期待を集めているからだ。
そこへ、円安という追い風が吹いた。外資系企業への人材を仲介するJAC Internationalのハリソン・ダンカン代表取締役社長はこう指摘する。「日本人はアジアの中で相対的に賃金が安い。その上、円安で日本での採用活動はさらに割安になった」。
円安を好機とみる企業は多い。同じく外資系人材仲介のロバート・ウォルターズ・ジャパンの担当者は「世界的な景気後退への懸念から採用活動を控える企業がある一方、ビジネスニーズや円安を背景に、優秀な日本人の採用に意欲的な企業がほとんどだ」と内情を明かす。
つまり、外資系企業は「安過ぎ日本人」をまさに爆買いしようとしているのだ。では、実際に外資系企業への転職でどれだけ給料は増えるのだろうか。
次ページでは、外資系企業への転職で給料が大幅に増えた「勝ち組」16職種の実例を公開する。そこから見えるのは、外資系企業への転職によって1000万円超えは今や当たり前ということだ。日系ベンダーでボロボロに働かされながら薄給のSE(システムエンジニア)でも、年収は倍増しとなる1000万円の大台に乗せている。
外資系企業は三菱商事やトヨタ自動車など、日本のトップ企業のエリートをピンポイントで狙っている。具体的な企業名に加え、どんなエリアの人材に触手が伸びているのかを明らかにしたい。