「マイクロソフトに戻りたいと思ったことはありませんか?」
ルーム・トゥ・リードは、世界中のすべての子どもに教育の機会をもたらすことをゴールに置いている。
「ビジネスの世界では機会があれば投資をし、事業を拡大して成長を目指すのが当たり前です。一方、NPOには物事を小さく考える傾向があることは否めないでしょう。しかし、私たちはものごとを小さく考えることをよしとせず、企業と同じようなスピードで成長することが必要だと考えています」(ウッド氏)。
ルーム・トゥ・リードは、スターバックスの店舗展開よりも速いペースで図書館をオープンすることを目指し、実際に数年でスターバックスを抜き去った。現在では、そのペースはスターバックスを大きく引き離している。
ウッド氏は、多くの人から「マイクロソフトに戻りたいと思ったことはありませんか?ドライバーがいて、ストックオプションもある生活を懐かしく思うことは?」と尋ねられるという。
「百聞は一見に如かずという言葉があります。ご質問への答えは、次の写真をご覧いただけばわかるでしょう」
スクリーンに映し出された写真には、笑顔の子どもたちに囲まれて花束を手にし、両手を空に向かって突き上げるウッド氏の姿があった(右写真)。
「これはWindows8が発売になったときのパーティーの写真ではありませんよ!」
最後に、スクリーンには1枚の長い橋の写真が表示された。
「マイクロソフトを辞めてルーム・トゥ・リードの活動を始めるとき、私はこのような怖い橋を渡らなくてはなりませんでした。橋のこちら側は、社会的地位やストックオプションがある、みなさんがよくご存じの世界。橋の向こう側は、ヒマラヤに本を届ける未知の世界だったわけです。しかし、私は自分が橋を渡ったことを大変うれしく思っています。いまのような活動ができ、みなさんのようなすばらしい方たちに出会える機会をもらえる人生に満足しています」
ルーム・トゥ・リードは、チームスポーツのようなものだとウッド氏は言う。「日本は、5年連続して寄付金額で世界のトップ5に入っています。これからも、ぜひ皆さんのお力をお借りしたいと思っています」という言葉に、会場からは大きな拍手が贈られた。
後編は5月1日 2日 更新予定です。
(※4月26日訂正)
【新刊のご紹介】
あのロングセラーに待望の続編が登場!
ジョン・ウッド著『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』
四六判・上製・328頁ISBN:978-4-478-02289-4
ネパールの山奥、たまたま訪れた地元の小学校で“本のない図書館”に衝撃を受けたジョン・ウッドが、マイクロソフトの経営幹部職を辞して2000年に立ち上げたNPO「ルーム・トゥ・リード」。設立から10年以上が経ち、いまや数々の賞を受賞する世界的なNPOとなった。
ジョンの2作目となる本書は、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”を伝える内容。本作の読みどころのひとつは、スターバックスの出店スピードをもしのぐ勢いで途上国に図書館・図書室を設置する“超成長組織”のリーダーとしての、ジョンの苦悩と試行錯誤だ。世界的に注目される社会起業家とはいえ、ジョンもひとりの人間。信じた人物に裏切られ、思わぬハプニングに泣かされるなかで、リーダーとしての自分の至らなさにいらだつことも一度や二度ではなかった。それでも、「2015年までに1000万人の子どもたちに教育機会を届ける」という途方もない目標に向かって突き進むジョンの姿は、私たちにとってもおおいに刺激になる。
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イントロダクション 10年間で1万カ所の図書館
第1章 大胆な目標は大胆な人を引き寄せる
第2章 1キログラムの金塊
第3章 人生の宝くじ
第4章 すべてはバフンダンダから始まった
第5章 チャレンジ・グラント・モデル──自分たちで助け合う手助けをする
第6章 バルマー主義で一流のチームをつくる
第7章 ツナミから1年
第8章 レンジローバーはいらない――経費削減戦争
第9章 ネパールのドクター・スース
第10章 ベイビー・フィッシュ、学校へ行く――現地語出版プログラム
第11章 南アフリカの悪夢
第12章 教育が社会を再建する
第13章 CEOを卒業する
第14章 ゴミ箱のなかの希望
第15章 「この図書館の本を全部読みます」
第16章 小さな肩に家族の夢をのせて
第17章 ミスターX
第18章 カンボジアに向けて──リテラシー・ワン
第19章 恐怖の足音
第20章 世界最長の資金集めメーター
第21章 公約違反
第22章 ボート・トゥ・リード
第23章 「本が読めなければ、学校は拷問だ」
第24章 テクノロジーがつなぐ想い
第25章 ミスター・ポエットとミス・ライブラリー