根気強くひとつのことを考えられない、寝ても疲れが取れない、歩くのが遅くなった……。「老い」は気付かぬうちに少しずつあなたを蝕んでいく。老いを少しでも遅くしたいと願わない人などいないだろう。そこで、食事術や生活習慣といった「不老術」をアメリカの名医がまとめた本が誕生、NYタイムズベストセラーに選ばれ、エリック・シュミットといった数多くの著名人から絶賛を受けている。世界9カ国以上で刊行の話題作『医者が教える最強の不老術』より、内容の一部を編集して特別に公開する。

老化に関する研究は「指数関数」的に進化しているPhoto: Adobe Stock

健康なまま100歳を迎える方法は
すでに証明されている

 テクノロジーと長寿科学における新たな進歩は、私たちの想像力の限界を押し広げ続けているが、こうした先端的な進歩がもたらすものを利用しなくても、長寿分野における革命的な発見を活用することはできる。

 今では、食事、生活習慣、サプリメント、さらには薬物療法によって長寿のマスタースイッチをコントロールし、健康なまま100歳を迎える方法が判明している。病気を治し、身体の修復システムを強化し、細胞や組織を再生・修復し、体内時計を巻き戻すことは可能だ。

 120歳、150歳、200歳まで(若々しさと活力を感じながら)生きることは、すぐ目前まできている治療法や技術の革新によって、まもなく可能になるだろう。あと10年あるいは15年健康を維持できれば、寿命回避速度に達するであろうとき、つまり科学の進歩が死を無限に先送りし続けるようになったときに、あなたは生きていられることになる。

 老化に関する研究は、世界中の研究所や研究センターで指数関数的に加速している。こうした技術革新を後押ししているのが、老化研究に対する大規模な民間投資だ。

 世界の億万長者は老化研究に対する資金提供を増強させており、グーグルのバイオテクノロジー企業であるキャリコ、ジェフ・ベゾスとユーリ・ミルナーが投資しているアルトス・ラボ、非営利団体のXプライズ財団などは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究予算をはるかに凌ぐ数十億ドルを老化研究に注ぎ込んでいる。

 私たちはまた、システム生物学、人工知能、ナノテクノロジー、量子コンピューターなどの革新により、科学の進歩と発見が指数関数的に増大している段階におり、老化研究の第一人者たちは、15年後には寿命回避速度に達するだろうと示唆している(*1)。

 だが、ハーバード大学およびマサチューセッツ工科大学(MIT)の遺伝学教授であるジョージ・チャーチは、すでにそこに到達しているかもしれないと言う。彼の研究室では、加齢に関連したバイオマーカーや病状の逆転が、ヒト細胞や動物の老化モデルですでに達成されている。想像することさえ難しいが、真の意味において健康寿命を延ばすのは、あと少しのところまできているのかもしれない(*2)。

 私たちは、ものごとを直線的に考えがちで、指数関数的には考えない。直線的に30歩進めば、約30メートルになる。だが、指数関数的に30歩進めば、地球を26周することになる。もし私があなたに1日1ドルを30日間にわたってあげたとしたら、あなたは30ドルを手にすることになる。だがもし、最初にあげる額は1セントだが、毎日、前の日の倍の額をあげるとしたら、30日後にあなたが手にする額は1000万ドルを超えることになるのだ。

参考文献
*1 Zolman ON. “Longevity Escape Velocity Medicine: A New Medical Specialty for Longevity?” Rejuvenation Res. 2018 Feb;21(1):1-2.
*2 Davidsohn N, et al. “A Single Combination Gene Therapy Treats Multiple Age-Related Diseases.” Proc Natl Acad Sci USA. 2019 Nov 19;116(47):23505-11; Lu Y, et al. “Reprogramming to Recover Youthful Epigenetic Information and Restore Vision.” Nature. 2020 Dec;588(7836):124-29; Jaijyan DK, et al. “New Intranasal and Injectable Gene Therapy for Healthy Life Extension.” Proc Natl Acad Sci USA. 2022 May 17;119(20): e2121499119.

(本原稿は、『医者が教える最強の不老術』から一部を抜粋し編集しています)