電気興業の前社長を相手取り、株主の投資会社リム・アドバイザーズが、2億円超を同社に賠償するよう求める株主代表訴訟を起こすことが分かった。物言う株主(アクティビスト)による訴訟は近年増加しており、アクティビストvs経営陣の対立の場が、株主総会から法廷へ移行傾向にある。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
物言う株主が提訴を請求
プライム上場企業で一体何が…
電気興業は、携帯電話の基地局や放送用アンテナなどを製造・販売し、2024年3月期の連結売上高は288億円。1925年に設立された国策会社の日本無線電信をルーツに持ち、現在は東京証券取引所プライム市場に上場する名門だ。
その電気興業は21年2月、当時の松澤幹夫社長が会長に退き、取締役執行役員だった近藤忠登史氏が社長に就く人事を突然発表。同年6月に同社は、松澤氏によるハラスメント行為や不明瞭な交際費支出に関する内部通報があったことを明らかにし、再発防止策を公表している。
不祥事に揺れた電気興業に対し、株主のリム・アドバイザーズが今回突き付けたのは、松澤氏個人に対する損害賠償請求だ。10月15日付で電気興業の監査役に提訴請求を行い、監査役が60日以内に提訴しなければリム自身が株主代表訴訟を起こす構えだ。
請求額は約2億3600万円。松澤氏個人に巨額を請求する根拠は一体何か。次ページで、その理由を明らかにするとともに、近年多発する「アクティビストvs経営陣」の法廷闘争の実情を描く。