物流パレット(荷役台)のレンタルで国内最大手の日本パレットレンタル(JPR)が、欧州系投資ファンドのEQTから買収提案を受けていたことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。だが、この提案にJPR取締役の過半数が反発し、2023年9月に当時の社長が事実上解任された。メガバンクや商社も絡む「クーデター」が一体なぜ、突然勃発したのか。特集『物流大戦』の#8で、その真相を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
昨年9月に社長が突然辞任
その裏にあった「幻」の買収構想
「一身上の都合により、取締役を辞任する」
今年4月30日、そんなプレスリリースを公表したのは、レンタルパレット最大手の日本パレットレンタル(JPR、東京都千代田区)だ。
同日付で辞任したのは、取締役会長の加納尚美氏と常務取締役の木村好伸氏。加納氏は2010年より長らく同社社長を務め、日本パレット協会会長などを歴任した業界の重鎮だ。その加納氏は昨年9月の任期途中に社長職を突然辞任し、代表権のない会長に退いていた。
「辞任ではなく、事実上の解任だ。加納氏の部下によるクーデターが起きた」。JPRの内部事情に詳しい金融関係者はそう明かす。
この関係者によれば、昨年9月13日に開かれた取締役会で、加納氏に対する社長解任の緊急動議が出され、加納氏はその場で辞任。動議を出した当時社内取締役の向井亮二氏が後任社長に就いたが、その向井氏もわずか1週間で辞任。別の社内取締役だった二村篤志氏が、現在社長を務めている。
JPRは売上高288億円、社員数359人の非上場企業だ。経営陣や取引先のほか、みずほ系の芙蓉総合リース、日本政策投資銀行、三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行など、そうそうたる大手金融機関が株主に名を連ねる。
取材を進めると、これら金融機関や総合商社を巻き込んだJPRの買収争奪戦が22年から23年にかけて勃発し、最終的に外資系ファンドが行った買収提案が、クーデターの引き金になったことが分かった。
実はJPRは、非上場でありながら物流の「2024年問題」を解決し得るキープレーヤーだ。そして争奪戦の火種は、今もくすぶっている。
一体、JPR内部で何が起きているのか。その全貌を次ページで明らかにする。