その結果、直近10年での平均寿命が延びるスピードは、20世紀の最後の10年間に比べると遅くなっていることが明らかになった。

 また、対象とされた8カ国と香港では、1990年から2019年にかけて平均寿命は平均でわずか6.5年しか延びていなかった。一方、米国は、10年間を単位として見た場合に、初めと終わりの時点で平均寿命の低下が見られる数少ない国の一つであるが、本研究でもこの現象が、20世紀の前半から中頃にかけて確認された。

 これは、スペイン風邪や戦争による死亡などの極端な出来事が原因であったが、近年では2010年から2019年にかけての中年層の死亡率の増加により低下していた。

寿命を延長させる上で
最大の障害になっているのは?

 Olshansky氏は、「この研究結果は、人間が生物学的な寿命の限界に近付いていることの新たな証拠となるものだ。寿命の最大の延長は、病気と闘う努力の成功によりすでに実現されている」と述べ、寿命をさらに延長させる上で、老化による有害な影響が最大の障害となっているとの考えを示している。

 Olshansky氏はまた、「今日、生存している高齢者のほとんどは、医学によって作られた時間を生きている。しかし、こうした医学的な応急処置の開発は加速しているにもかかわらず、延長する寿命の年数は減少していることから、平均寿命が急速に延長する時代が終わったことは明らかだ」と話す。

 研究グループは、科学と医学によりさらなる寿命の延長がもたらされる可能性はあるものの、寿命を延ばすよりも生活の質(QOL)を向上させる努力の方が理にかなっているのではないかとの考えを示している。そしてジェロサイエンス(老化研究)への投資を呼び掛け、「それが健康と寿命延長の次の波の鍵となる可能性がある」と主張している。

 Olshansky氏は、この研究で示唆された平均寿命の限界について、「レンガの壁のように打破できないものではなく、ガラスの天井のように克服できる可能性はある」とし、「ジェロサイエンスと老化の影響を遅らせる努力によって、健康と長寿のガラスの天井を打ち破ることはできる」と述べている。(HealthDay News 2024年10月7日)

https://www.healthday.com/health-news/general-health/increases-in-life-span-are-beginning-to-slow

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