「上司も部下も、社会人全員が一度は読むべき本」「被害者や加害者にはならないためにもできるだけ多くの人に読んでほしい」と話題沸騰中の本がある。『それ、パワハラですよ?』(著者・梅澤康二弁護士/マンガ・若林杏樹)だ。自分はパワハラしない、されないから関係ない、と思っていても、不意打ち的にパワハラに巻き込まれることがある。自分の身を守るためにもぜひ読んでおきたい1冊。今回は特別に本書より一部抜粋・再編集して内容を紹介する。
業務終了後や土日のメール。これってすぐに返事しなくちゃいけないの?
30代男性。会社でリモートワークが活用されており、ノートPCやスマホが支給され、会社のメールやチャットツールで上司から連絡が来る。土日にも連絡が来ることがあり、返事をせざるをえない。
【解説】
帰宅後に、即時返答しなければいけないような仕事の連絡をどんどん送ってくるのはやめてほしい、と考える人が大半ではないでしょうか。
リモートワークも普及しているので、就業時間外でもスマホで仕事のメールを受信することもあるでしょう。
この点、単に業務メールを受信するだけであれば、即時の対応が求められるような場合でないかぎり、ただちに業務指示があったことにはなりません。
また、メールではなく電話がかかってきた場合でも、単純な事務連絡や確認の電話であれば拘束性が乏しく、業務への従事を求めるものにはならないでしょう。
したがって、上長から業務時間外にメールや電話で連絡があっただけでは、パワハラにはなりにくいと考えます。
他方で、即時の対応を求めるものであったり、相応の時間を拘束されたりする場合には、「労務提供を求めるもの」と考えることもできます。
この場合でも業務上の必要性があり、かつ対応時間を労働時間として考慮されている場合には、正当な業務指示として問題にはなりにくいでしょう。
こんなメールはパワハラになる可能性も!
しかし、次のような場合は問題になる可能性があります。
●業務上の必要性が乏しいのに、プライベートな時間に対応を求める連絡を長期にわたって、何度も繰り返す
●対応に相応の労力を要することを知りながら、これを労働時間と認めずサービス残業を強いる
これらの場合は、業務上の必要性が否定され、常識的に認められないものとして、パワハラと評価される可能性があります。
※『それ、パワハラですよ?』では、パワハラになるかどうかがわかりにくい「グレーゾーン事例」を多数あげて、危機管理対策の方法を徹底的に解説しています。
部下も管理職も自分の身を守るためにぜひ読んでほしい1冊です。
弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士(第二東京弁護士会 会員)
2006年司法試験(旧試験)合格、2007年東京大学法学部卒業、2008年最高裁判所司法研修所修了、2008年アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、2014年同事務所退所、同年プラム綜合法律事務所設立。主な業務分野は、労務全般の対応(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)、紛争等の対応(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)、その他企業法務全般の相談など。著書に『それ、パワハラですよ?』(ダイヤモンド社)、『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)がある。