ずっと住み続けるなら
家を「資産」とは考えない
1つは、マイホームを自分の資産ととらえるべきではないということ。多くの人は、家を買ったら一生住み続けることになりますが、住んでいる間、そこから収益が生まれるわけではありません。
つまり、ローンを組んで家を買うのは、実質的には「家賃の前払い」をしているのと同じことなのです。家を買うことの最大のメリットは、年金生活に入り、現役時代より収入が大幅にダウンした時、家賃を払わなくてすむことでしょう。
このように考えると、60歳以降まで返済が続くような住宅ローンを組んで家を買うのは「家賃の前払い」にさえなりませんから、避けるべきだということになります。退職して収入が下がれば、現役時代と変わらずローン返済を続けるのは現実的ではありません。「退職金で一括返済すればいい」と考える人もいますが、大事な老後資金を住宅ローン返済に費やしてしまえば、結局、老後の家計が破綻してしまいかねないのです。
こうしたリスクはちょっと想像力を働かせればすぐ気づきそうなものですが、現実には、70歳、75歳まで返済が続くようなローンを組む人が少なくありません。不動産の売り手が「途中で繰り上げ返済すれば退職までに完済できますから、大丈夫ですよ」などとセールストークを繰り広げると、それを鵜呑みにしてしまう人が多いようです。
しかし、繰り上げ返済をするのはそう簡単なことではありません。子どもの教育費や自分たちの老後資金も貯めながら、それとは別に繰り上げ返済の資金も貯蓄しなくてはならないのです。繰り上げ返済をしながら子どもの教育費がかさむ時期も乗り越えられるかどうか考えてみてください。
頭金を貯めるのは
貯蓄のトレーニングになる!
もう1つは、これまでにしっかり貯蓄した実績がないなら、まずは貯蓄のトレーニングをしなくてはならないということです。
たとえば共働き夫婦で、これまでに毎年200万円貯蓄できている家計なら、マイホーム購入で年間の住居費が50万円増えたとしても、150万円は貯め続けられるでしょう。家計の支出が増えるタイミングでも、年100万円は貯められそうです。
しかし毎年50万円しか貯蓄できていないとしたら、マイホーム購入後、まったくお金が貯められなくなることは目に見えています。繰り上げ返済はおろか、子どもの教育資金や老後資金を貯めることすらままならなくなるかもしれません。
私は、住宅ローンのコンサルティングをする際、相談者の方に必ず「頭金はいつ頃、どうやって貯めましたか?」と尋ねます。十分な頭金を持っていても、「親から援助してもらった」「自分でまとまったお金を貯めた経験がない」などというケースでは、住宅購入後に「お金を貯められない家計」になるリスクが非常に高いからです。
私はいつも「住宅ローンを組むなら十分な頭金を貯めましょう」とアドバイスしていますが、これは、頭金を入れることで借入額が小さくなって利息負担が軽減できるだけでなく、頭金を貯めることが住宅ローンを計画的に返済しながら家計を運営していくためのトレーニングになるからです。お金を貯めた経験がないなら、「家賃がもったいない」という短絡的な理由で家を買うのは避けるべきでしょう。
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