突然の財務相解任で
ドイツ連立政権が崩壊
ドイツの連立政権が予算案を巡る対立から崩壊し、年明けにも解散総選挙が実施されることになった。
ドイツのショルツ首相は11月6日、リントナー財務大臣の解任を発表。同日、リントナー氏は自身が率いる自由民主党(FDP)の連立離脱を表明し、「信号機連立」(各党のイメージカラー(社会民主党(SPD):赤、FDP:黄、緑の党:緑)からそう呼ばれる)の崩壊が決定的となった。
与野党の協議の結果、12月16日に連邦議会で信任投票が実施されることが決定した。FDPの離脱によって少数与党となったショルツ政権は不信任となることがほぼ確実視されている。シュタンマイヤー独大統領は、政権が不信任となった場合には議会を解散すると表明しており、来年2月23日にドイツ連邦議会選挙が実施される見込みだ。
今回の混乱の主因は、2025年度予算案を巡る連立政権内での対立が深刻化し、予算成立が見通せない状況になったことだ。対立の内容に立ち入る前に、ドイツの財政ルールについて触れておきたい。
ドイツでは、新規国債発行による借り入れ(財政赤字)に関する非常に厳格な規定(債務ブレーキ)が基本法(憲法)によって定められている。これは、コロナ禍のような非常事態を除き、財政赤字を対名目GDP比で0.35%以内に抑えなければならないとするものであり、同比率が3%を超えると是正措置の対象となるEUの財政ルールよりもはるかに厳しい基準だ。
債務ブレーキはコロナ禍の影響で2020年に一時停止されていたが、24年から適用が再開された。24年度予算編成時は、連邦憲法裁判所による一部予算の違憲判決などもあり、予算成立が24年2月にずれ込みはしたものの、エネルギー補助金の削減などによって財政赤字基準をなんとかクリアした。