米金融大手モルガン・スタンレーは昨年、長年の証券顧客が2005年に米国の裁判所で有罪となっていたことを知った。罪はテロ捜査に関して虚偽の供述をしたというもので、この顧客は国際テロ組織アルカイダによる米大使館爆破事件とのつながりもあった。
モルガン・スタンレーは法執行機関に通報し、顧客の口座を閉鎖した。その時点で、少なくとも数万ドルがパキスタンのATMから引き出されていた。
しかし、この過失は例外的なものではなかった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した社内文書によると、あるケースでは、50億ドル(約7700億円)以上の資産を持つと主張する自称プリンセスが、基本的な身元調査や適切なデューデリジェンス(資産査定)が完了していないのにもかかわらず、数週間にわたって同行との取引が許可されていた。
彼女は自身の資産の出所について奇妙な説明をした。ルーマニア最後の王の親族だと語ったり、評価額が数十億ドル相当の製薬会社のオーナーだと主張したりした。最終的には、同行のグローバル金融犯罪対策部門が顧客関係を断つよう促した。
金融犯罪対策部門の従業員の一人は、この混乱した事例について「信じられない。まるでタランティーノ映画のラストシーンみたい…みんなが殺しまくる」と社内のチャットに書き込んだ。
モルガン・スタンレーのウェルスマネジメント(富裕層向け資産運用)部門は約6兆ドルの資産を運用している。同行の総収入の半分近くを占め、重要な利益をもたらしている。