米国では、先行き見通しを立てにくいマクロ情勢が続く中、FRB(米連邦準備制度理事会)は金融政策の運営を「データ次第」とする柔軟姿勢を取っている。しかし、年初に市場は今年の利下げを6回と織り込み、4月には景気しっかりで利上げも辞さずと見通し、8月には景気後退不安が浮上し、足元では景気堅調に逆戻りとデータの振れは激しく、FRBも市場も目線を節操なく変転させている。そもそもデータはなぜこんなに振れるのか、信頼に値するのか、投資家としてどう対処するべきか。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)
あまりにも変転が
激しすぎる米国の景況感
米国経済は、数カ月ごとに強弱感を変転させている。8月には景気後退が恐れられた。それが10月には景気は堅調であり、悪化はないとばかりに自信を深めている。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、この先読みしにくい情勢の中、金融政策を「(景気・物価)データ次第」で柔軟に行うスタンスを取って久しい。
そして、そのデータが見事なまでに強弱変転するため、金融当局もまたタカ派になったりハト派になったり、態度の変転を繰り返すのである。当然、市場はFRBの意向に沿って、株も金利も為替もその都度相場の明暗を切り替え、右往左往する。
しかし、数カ月ごとに明るくなったり暗くなったりあっさり変転するデータは、米経済の実態を適切に示しているのだろうか。データ自体を疑問視したところで、中央銀行も、金融機関も、投資家も、企業も、データに沿って行動する以上、相場もそう動く。データに逆らっても浮かばれることはないのである。
それでも、もしデータ自体に歪みがあるなら、政策当局も、市場も、意味なく振り回されていることになる。次ページでは、投資家として、この節操ないデータをどう読み、どう付き合っていくのが適切かを考えたい。