コミュニケーションにおいて“話が上手になること”よりもはるかに大切なこと、それは“承認欲求をどうコントロールするか”です。
そう語るのは、2023年と2024年の年間ベストセラーランキングビジネス書部門で2年連続1位(日販/トーハン調べ)となり、「いま、流行りの自己啓発本かぁ、と思って手に取ったことを反省しました」「あとがきで泣けた」などと反響を呼び続けている『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏。本記事は、2年連続日本で一番売れたビジネス書からこじらせると厄介な承認欲求についての項目を一部編集してお届けする。(構成/ダイヤモンド社・淡路勇介)
誰でもコミュニケーション強者になれる
コミュニケーションにおいて“話が上手になること”よりもはるかに大切なことがあります。それは“承認欲求をどうコントロールするか”です。
同志社大学教授の太田肇氏は、著者『お金より名誉のモチベーション論』(東洋経済新報社)の中で、
人は他人から認められたい、尊敬されたいと願っており、それによって動機づけられるものだ。
と述べ、それを「承認人」(ホモ・リスペクタス)と名づけています。
昨今のSNSをみても、人は多かれ少なかれ「承認欲求」によって突き動かされるのは間違いないでしょう。ほとんどの人間はみな周りから認められ、賞賛されたいと思っているのです。
これは、裏を返せば、自分の承認欲求は抑制し、他者の承認欲求を満たすことができれば、「コミュニケーションの強者」になれるということです。
ただ、「自己の抑制」と「他者の承認」の両立は、それほど簡単なことではありません。自制しつつ、他者を賞賛するにはそれなりの精神力が必要とされるからです。話す前にどれだけ“自分の話をできるだけしない。頭のいいふりをしない”と自分に言い聞かせても、つい自分の話をしてしまうのは、この承認欲求が頭をもたげるからでしょう。
承認欲求をコントロールし、コミュニケーションの強者になるには、ふたつの条件があります。
条件①自信を持つこと
自尊心が低く、自分に自信がない人間は、他者をうまく承認することができません。
一見、社会的に成功している人物であっても自尊心が低く「他者に承認を要求すること」しかできない人物は「承認欲求を欲する立場」ですから、コミュニケーションにおいては弱者といえます。
条件②口(自己アピール)ではなく、結果で自分自身の有能さを示すこと
「へぇ、そうなんだ! すごいね! そういえば私さ……」
このようになんでもすぐに自分の話をしようとする人がいます。相手の話に反応はしつつも、すぐ自分の話に引き込もうとする人です。
このような人は「他者の承認」をすると、その分、釣り合いを取ろうとして自分の話をせずにはいられないのです。
しかし、それは自己アピールによって承認を得ようとする態度であり、コミュニケーション強者の態度とはいえません。
他者は褒めつつ、自分は「なんでもない人間です」という顔をするのが、コミュニケーション強者の態度であり、知的で慕われる人の態度です。
承認欲求をコントロールし、コミュニケーションの強者になるには、自分の話(自己PR)で他者の承認を得ようとせず、他者の承認は、結果を出せば勝手についてくると強く認識する必要があります。
「そんなことを言っても、相手から“大したことない奴”と舐められてしまうのでは?」
と思う方もいるでしょう。それでいいのです。
コミュニケーション強者の胸の内はこうです。