【オピニオン】トランプ氏、FRBの政策に異議を唱えるべきPhoto:Bloomberg Creative Photos/gettyimages

 ドナルド・トランプ氏が次期米大統領となった今、米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を損なう危険性についての警告を予期しておく必要がある。金融当局者たちは、長期的な金融の安定に関する決定に政治が一切関与すべきではないと厳かに説明するだろう。FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つ12人のメンバーに権力が集中している状況の方を、われわれはもっと懸念すべきだ。彼らは政策決定を通じて、失業者を減少あるいは増加させたり、インフレ率を低下あるいは上昇させたり、経済成長を抑制あるいは刺激したりできる。

 FRBの決定は明らかに政治的な影響力を持ち、一部の人々には恩恵となるが、一部の人には打撃となる。過去4年間の米家計における保有資産増加分の約62%は、上位10%の富裕層が得たものだ。こうした米国の最富裕層の並外れて大きな利益は、金融政策が引き起こした株価高騰の結果だ。株価の上昇は主として既に潤沢な資産を持つ人々に恩恵をもたらした。

 このような富の不平等により、有権者は変化を求めるようになる。トランプ氏はこうした不満への対処を柱とする経済政策を構築し、インフレ率と金利の低下、賃金の上昇、経済成長の加速を約束した。だがこれらの目標が、雇用最大化と物価安定というFRBの二つの使命を達成するためのFRBのモデルと整合性を持たない限り、FRBはトランプ氏の政策の効果を損ないかねない。

 FRB議長は経済に関する世論に強い影響を与えることができる。大統領選の2日後、FRBのジェローム・パウエル議長は0.25ポイントの利下げを発表した。これは9月に発表された0.5ポイントの大幅利下げに続くもので、同議長はこれについて、「経済が緩やかに成長し、インフレ率が2%に向けて持続的に低下する」中で労働市場が堅調を保つという、FRBの目標達成を進めるための決定だと述べた。